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第17話 ※グロ(生首描写)

 火事場の馬鹿力とでも言うべきか、疲れなどどこへやら、真白の手を引いて俺はひたすらに走った。  自分が死にたくない、というより、真白を死なせたくない。  朱や椿、他にも金浦崎村で死んだであろう人達の分まで、生きなければ示しがつかない。  そして、日本と金浦崎村とを二分するような、恐ろしい文言が書かれた境目までやって来た。  ここまで来れば……いや、甘い。  むしろここで食い止めようとしている。いつの間にか村人達の松明の灯りが俺達を囲んでいる。  鎌や鍬、包丁、杭。恐ろしいものを持って。昨日までと違う、彼らの何食わぬ顔付きが恐ろしい。  心の臓が高鳴る。本気で俺達を殺す気だ。  真白は儀式に使う用に真っ先に捕らえられるにしても、俺は、俺はきっと、その場で惨殺される。  真白の見ている前で……。それだけは駄目だ! 「殺せ!!」  叫んだ村人の中には、朱の母もいた。 「あいつと仲良くしたから朱は死んだのよ。あの人だって……! 放っておけばすぐ死んだのに、あいつを生かしたから……! 医者となんて結婚しなければよかった! 外から来た人となんて……恋に、落ちなければ……あぁあぁあああああッ!!」  夫と娘を失った彼女には、もう怖いものなどないのだろう。  真白を、俺を憎むことこそが生きる糧となっているような殺意を感じる。  朱に関しては、罪の意識が芽生えないとは言えない。  例え真白が死んでも、朱は優しいから悲しみを負いつつも、生きていたと思う。  それが外から来た俺が真白と勝手に仲良くなって、真白を心配し、かつ俺のことも好意的に接してくれる朱は真白の出自や自身の家庭のことを話してくれて。  結果的に呪いとやらに加担してしまった。俺のせいだ。  でも、たったそれだけで。  この村で儀式がどれほど信奉されているのかは知らない。  だからと言って子供をあんな風に殺せる神経がわからない。  死体にあった四肢の痣……あれはきっと、生前に縄できつく縛られたもの。  信頼していたはずの大人達に裏切られて、死さえも言い渡されて、いったいどれだけ恐怖だったか。  謝っても謝りきれない。代われるものなら自分が代わってやりたかった。 「この女も、伝承通りにしていれば人間の扱いくらいはしてやろうと思っていたのにのう」  村長が言い、隣の屈強な村人が椿の亡骸を差し出した。  達磨のように落ちたのは斬り落とされたばかりの生首。  真白にはとてもじゃないが見せられる訳もなく、咄嗟に頭を抱くようにして両眼を覆い隠した。  彼の美しい瞳に映していいのは、こんな残酷な現実じゃない。  それに……儀式を行なっても人間扱いだけ? 椿の解釈では、それこそ独身の女性が村で暮らすのに特別な扱いを受けられる地位を与えられるはずが……ああ、結局は何もかも、上の者の考えで決まる。  椿さえもそうして騙していたのか。なんて卑劣な連中だ。

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