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2人は、帽子屋の中に入って行った。
「スザクさん、俺、帽子なんていいよ。いつもの黒いキャップ、ボロボロだけど気に入ってるし、そもそも任務のときに顔をなるべく隠したくて被ってるだけだから」
ユキトは言った。
「そうか、じゃあそのキャップはそのまま使い続けたらいいさ。今から買うのは任務以外のとき用ということにしよう」
「任務以外?」
「そう。例えば今日みたいに、私と出掛けるときとかね」
今日みたいに…って、またスザクさんと任務以外でこうやって出掛けるってことか?今日だって、なんで任務じゃないのにスザクさんと一緒にいるんだろう、とユキトは思う。
スザクが何を考えているのか、ユキトには全くわからなかった。
「これ、どうかな?」
近くにあったキャップを手に取り、ぼーっと立っていたユキトの頭にかぶせた。
「わ、スザクさん…っ」
考え事をしていたユキトは少し驚いて声を上げた。
「うん、似合うね。けど、ちょっと大きかったかな。いやユキトの頭が小さいのかな。鏡、見てご覧」
ユキトは促されるままに鏡を見る。
「どう?気にいらない?」
「…よくわかんない…」
ユキトは素っ気ない返事をしてしまった。
何と言うべきなのかがわからなかったのだ。
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