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スザクの姿を確認した途端、ユキトの目からポロポロと涙が溢れた。
「ぅ…っ、ぐすっ…スザクさん…っ」
ダムが決壊したように、涙が止まらなかった。
勝手に流れ出る涙に、ユキトは自分で驚いた。
「ユキトから手を離せ」
スザクの低い声が響く。
離れていても充分怒りが伝わる程のとてつもないオーラを放っており、ベスや男達をビリビリと威圧した。
ベスは銃を取り出し、ユキトに向ける。
「これ以上近付くと、この子、死ぬわよ」
銃口をユキトのへそにピタリとあてた。ひんやりとした感触にユキトは身を震わせる。
「この子が可愛いんでしょう?私もこの子は好きよ。大人しくしていれば殺しはしないわ」
ベスは不敵に笑いながら言ったが、気付くとスザクの姿が消えていた。
次の瞬間、スザクはベスのすぐ隣にまで来ていた。
「なっ、いつの間に…」
ベスが反応するより先に銃を蹴り飛ばし、車椅子ごとベスをなぎ倒した。
「き、貴様!!」
男達が一斉にスザクに襲いかかるも、全て一撃で仕留めてしまった。
そして、膝から崩れ落ちるユキトを支える。
「ユキト、遅くなってすまない」
「…スザクさん…」
ユキトは、スザクの申し訳無さそうな顔を見て、小さくスザクの名前を読んだ。
「貴様、殺してやるわ…っ!」
ベスはそう叫び車椅子からなんとか起き上がろうと這いつくばる。
そのベスにスザクは銃口を向け、一言だけ言った。
「お前の罪は重い」
バンッバンッ
ベスに向かって銃を2発撃ち、スザクはベスを殺した。
そして、ユキトを姫抱きにした。
「ここはあと10分で爆発する。脱出するよ」
スザクはユキトに優しくそう言うと、駆け足でその場を去った。
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