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第43話「行為」

「ん、、、」 舌が絡む感覚も、藤崎の唇があたる感覚も、義人には何もかもが気持ち良かった。 前までは気持ち悪くて仕方なかった口づけが、今はせがみそうになるくらいにいい。 する相手が違うだけでこんなにも変わってくるのだから、「好き」と言う感情は偉大だ。怖さすらあまり感じない。藤崎だから大丈夫、と頭のどこかできちんと分かっている。 「んん、、ふじ、さき、ん、」 くちゅくちゅと漏れる音。交ざり合う唾液が暖かく、慣れてきて自分から舌を出す。 ニッと、藤崎は意地悪く笑って義人を見下ろしていた。 「ん、ぁ、藤崎、、?」 「あーあ。そんな顔して」 「え?」 「はあ、、俺、結構苦労しそう」 意地の悪い笑みを浮かべたまま、顎を指でクイ、と持ち上げられる。 「ん、ん?なに?」 「可愛すぎて他のやつに取られそうでいや」 「はあ、、何言ってんの?」 「まあ譲る気なんかないけど」 「はあ?」 「俺が我慢が効かなくなるなって話し」 そう言ってまた塞がれる。翻弄されてばかりで、慣れたと言っても舌を出すのが精一杯だった。 藤崎のキスは、経験豊富と物語るよりも、そういうセンスがあると思わされる。そう思うとまた、体の中心にじんわりと熱が集まってきた。 「っん、ぷ、、ふっ、、」 「ん?、、息継ぎ、わかんない?」 「ご、ごめ」 「謝んなくて良いから」 どうしてそう責めるの?何も悪くないのに。 藤崎は甘ったるい視線で義人を見ながら、下唇を親指でゆっくりとなぞり、自信がなさそうに眉毛が八の字になっている彼を落ち着かせる。 「わからない、、」 「鼻でできる?」 「気持ちよすぎて、忘れる」 「っ、、ったくもう」 ベロ、と義人の唇を舐めてから再開する。 その瞬間に、義人は下半身に違和感を感じて身を引いた。 「っえ、あ?!」 「触らせて」 「ッちょ、!」 いやらしい手つきで、義人のそこに藤崎が触れている。 借りたスウェットの上から形を確かめるようにズリ、と撫でられた。 「無理だって!」 「怖がらないで。ほら、大丈夫だから」 そう言って義人の体を空いている右手で抱きしめ、耳元で優しい声色で呟く。ビク、と肩が跳ねたが、藤崎は気にせずゆっくりと義人の脚の間の形をなぞって行った。 「あっ、」 「ん?」 「ぁ、はあッ」 藤崎に、触られている。 この間、義人が自分1人でしてしまった事が頭をよぎり、罪悪感と共に快感が頭をぐるぐると駆け巡り始める。 荒くなる息と、上がって行く体温がそれを加速させた。 「藤崎、無理、ダメ」 「ダメ?でも勃ったよ?」 ハッとして藤崎から少し体を離し、自分の下半身を見下ろす。そこには布を押し上げて主張している義人の一部があった。 「ち、違う、違う!!」 「佐藤くん、俺で勃ったんだよね?良かった、勃たないかと思ったから」 「、、え?」 嬉しそうに細められた目と視線が交わると、藤崎は、ちゅ、と軽く唇にキスを落として来た。 「良かった。俺で勃ってくれて」 「何言ってんの?」 「んー、俺も、結局見た目もめちゃくちゃ男だから。佐藤くんが俺で勃たない可能性もあるなあって思ってたんだよ。少し自信なかった」 「、、そんな、」 (あ、そっか) 藤崎だって不安なんだと、少し緊張が解ける。 好き同士で、自分は抱けると言っても義人の身体に関しては未知数であり、藤崎も少なからず勃たなかったときの想像はしていたようだった。 「2人で気持ち良くなれるね」 耳元で聞こえた声にホッとしたように義人は脱力した。彼だけが緊張して、彼だけが分からないと不安がっている訳ではない。 藤崎が言った勉強していこうと言うのは男同士のセックスを、と言う意味の他にお互いの身体や相性についてももちろん含まれていたのだ。 「、、ん」 「触っていい?大丈夫?」 「ごめん、ゆっくりがいい」 「分かった」 それからまたキスをして、藤崎はどのくらいの時間かは分からないが義人のそれを撫でて、なぞってを繰り返し、立ち上がったそれが苦しくないよう少しずつスウェットを、次に下着をと脱がせて行く。 「パンツ、脱げる?」 「う、、ん」 「佐藤くん」 「ん、?」 「大丈夫だよ」 「っ、、ん」 低い声が耳を犯すみたいで、義人は藤崎にそう言われると逆らえず下着すら脱いでしまう。ソファの下に落とされたスウェットの上にパサ、と義人の履いていたボクサーパンツが乗せられた。 「む、無理」 泣きそうな声でそう言うと、両腕を上げて顔を隠す。藤崎がまじまじと自分の脚の間にそそり立った自分のそれを見ている光景が、死ぬ程に恥ずかしくてならなかった。 「少し、慣れてからの方がいいか」 「なに、、?」 「足、広げてて」 「え?、、あっ!!」 最初に亀頭の先に藤崎の左手の中指が触れ、くるくるとそこで小さく円を描かれる。ヒク、ヒク、と腰が反応して、それだけで足の指の先までピリっと電流が走る。 「ッ?!」 「痛くない?」 「あ、ぁ、、大丈夫、あっ」 顔を覆う手を藤崎に退けられ、ねっとりとしたしつこいキスが始まる。 その間も義人のそれは焦らすように藤崎の指に先端をこねられ、次に亀頭全体的を中指と人差し指の間でゆっくりと上下に擦り上げられる。 「ん、、んふっ、ん」 息ができない。自分のそれに他の誰かが、いや、藤崎が触っている事が信じられず、目をギュッとつぶってやり過ごそうとした。 「佐藤くん、ちゃんと見てて」 「あんっ」 親指でくにっと亀頭のすぐ下の裏筋を少し力を入れて押し上げられ、思わず声が漏れて腰が浮く。 「ぁ、ちが、」 「いいんだって。普通だよ?」 「嫌だ、こんな声、気持ち悪い」 力のない潤んだ瞳が藤崎を見上げている。 ゆっくり頬を撫でながら義人に言い聞かせるように、藤崎は義人を見つめ返して安心させていた。 そうやると、何かひとつ変化があるごとに力が入ってしまう身体から、少しずつ緊張が抜けるのだ。 「変じゃない。俺は聞きたい」 「藤崎はこんな声出してないからだろ」 「佐藤くんの中に入れたら俺だって喘ぐよ?」 「あ、あえ、ぐって、入れるって、なに」 「そこまでゆっくりやるから焦らないでよ。佐藤くん、俺の手に集中して。声出して」 「隣に聞こえるから」 「聞こえないよ、そんなに大きい声出してないだろ」 すりすりと頬を撫でると、義人は一度大きく、はあ、と力を込めて息を吐く。泣きそうな顔にはそそられるが、義人が嫌で泣いてしまうなら行為自体いつでもやめようと藤崎は考えている。 「嫌だッ」 「ん。じゃあ、嫌だったら出さないで大丈夫。その代わり、今からもうちょっとここを触るけど、嫌にならないでちょっとされるがままにしてみて。気持ち良くするから」 「え、、?」 「ソファ狭かったな。後で移動しようか。起きれる?」 「うん」 立ち上がった藤崎に腕を引っ張られ、半ベソかいたような状態で義人が起き上がりソファに座る。それでも萎える事なくそこは勃ったままだった。 「手、握って」 「ん、、」 自分のそこをあまり見ないようにそっぽを向いている義人の左手と、無理矢理開かせた義人の脚の間、ラグの上に膝立ちした藤崎の右手が絡まる。 「んっ、」 藤崎の左手がそこに再び触れてゆっくりと全体を上下に扱き始め、両足に響く快感に義人の表情が狡猾と歪んでいく。一瞬目を閉じて、自分が何をされているのかを言われた通りに見ようとした瞬間に、亀頭が熱くて柔らかく、湿ったものに包まれた。 「ッッあ、!?」 「ん、」 「なに、ぁ、ぁああ、やめ、え、やめ、藤崎、ダメ!!」 目を開けて飛び込んできた光景は、藤崎が自分のそれを口に咥えて飲み込んでいくところだった。 感じた事のない感触と感覚に包まれて、義人が思わず立ち上がりそうになる。ギュッと爪を立てて握った藤崎の手が、優しく義人の手を握り返して指をさすってくる。 「あっ、あっ、あっ」 左手が腰を掴み、戻れとソファに押し返してくる。もう一度座り込むと左手で藤崎の手を握ったまま、義人は余った右手で必死に自分の口を覆った。目をギュッと閉じ、されている行為と快感にひたすら耐える。 「はあっ、、はあっ、、ん、あ」 ぬる、ぬるとそれが藤崎の唾液で濡らされ、滑りが良くなって口の中を出たり入ったりしている。たまに手で扱かれながら、亀頭だけ口に含まれて舌で先っぽ、尿道の入り口をぐりぐりと掘られては腰が跳ね回った。それをやられながら指で裏筋を繰り返し撫でられ、また亀頭のすぐ下のところをグッと力を入れて押し上げられると途端に声が漏れる。 「ぁあっ!!」 掠れて消えそうな声。息を吐き出したいだけなのに、どうしてもいやらしい声が乗って出てしまう。 「ああ、ああ、、あー、、んっんうっ」 キスよりも息が続かない。 「ごめ、ごめん、なさい、、ごめんなさい、ごめんなさい」 いっぱいいっぱいになった頭は整理がつかず、自分が分からずに声を漏らしながら、とうとう義人はボロボロと泣き始めていた。 「ごめんなさい、ごめんなさいぃ、、」 感じ過ぎて唾液がよく飲み込めない。んぐっ、んぐっ、と息を止めて何度も飲み込み直し、それが終わると胸を一気に膨らませて酸素を取り込む。 「気持ちいいね?可愛いよ」 「やめて、くださいっ、やめて、」 ひゅー、ひゅー、と息をしながらその合間に快感のせいでだらしない声が出て行く。 自分が自分でなくなった。義人は怖くて堪らず泣き続けている。 「ん、、佐藤くん泣かないで。どうして?可愛いよ」 「嫌だ、こんなの見せたくない!!」 「じゃあやめようか?」 「ッ、」 上がった息がまだ続いている。けれどそのひと言で動きを止めた義人は、恐る恐る藤崎を見下ろす。唾液と先走りの体液が混ざったぬるぬるとした感触がそれを覆ったまま、ゆっくりと藤崎は左手で包んで擦り続けている。 「な、なに、、?」 「佐藤くんがいやならやめる」 「あ、、」 ひくん、ひくん、と腰が小さく動いていた。 「本当にいや?」 舌が、べろん、と一気に付け根から亀頭の先まで舐め上げる。 「んぁっ!」 ビクン、と大きく脚が揺れた。 「どうする?」 「うっ、、うう、」 涙も止まらない。 ズ、ズ、と鼻をすすり、また大きく胸を膨らませて呼吸を繰り返す。少しだけ落ち着くと、右手に覆われた口から少しだけ声が聞こえた。 「や、、め、ない、で」 「うん、俺ももっとしたかった」 今度は少しだけ薄目を開いて、藤崎が自分のそれに口を付けて、奥まで咥えて行くところをまじまじと見つめる。 「ん、ふっ」 気持ちがいい。されるがままにしていると、どんどん射精感が高まってくる。 熱い吐息を漏らし、肩で呼吸しながら藤崎を見下ろしてギッと左手で更に藤崎の手の甲に爪痕を付ける。応えるように優しく握り返してくると、藤崎は裏筋を執拗に舐め上げて先端をまたほじくって遊んだ。 「ぁんっ、あっあっ、んんっ」 もう我慢できずに声を漏らして、荒い呼吸音を藤崎に聞かせて、口を覆っていた右手を藤崎の髪に伸ばし、痛くない程度に頭を掴む。 「佐藤くん、気持ちいいね?」 「んっ、気持ち、いっ、、」 段々と素直になっていく義人を下から見上げ、満足そうにニヤリと笑う。 妖艶に舌なめずりして見せると、またチュ、チュ、とそこに口付けてしゃぶり始める。 「気持ちいい、よ、、気持ちぃ、、あっ」 「可愛いよ。可愛すぎて堪らない」 知らぬ間に腰を前に突き出して小さく振っている義人を眺め、1番反応が良かった間隔で、強さで更にそこを扱き上げて行く。 「ダメ、待った、藤崎頼む、待って、、あ」 はあ、はあ、と大きく規則的に息をして、段々とその呼吸の速度は上がっていった。 (イキそうなんだ) 「お願い、藤崎お願いだ、からっ、、あっ、うっ」 「ん?イク?」 「ダメだ、放して、お願いだから、放してッ」 義人の両手がぶるぶると震える。震えながらも藤崎を見下ろして、泣きながら必死に射精を我慢している。 「イクなら、イクって言って。そしたら放すよ」 じゅぷぷ、とまた深く咥えられ、無意識に腰をゆるゆると動かしてしまう。 藤崎の優しい声に、だったらちゃんと言わないと、ととろけた頭が理解する。 「あっ、あっ、」 「ん、、、ん、」 「気持ちいいっ、気持ちいッ、はあ、はあっ」 ただ粘着質ないやらしい音が部屋に響いている。 「ぁ、ぁあ、い、イク、イク、藤崎、イク、うっ」 「ん、」 「あっ、ぁあっあっ!放して、放せッ、あッッ!!」 咄嗟に掴まれていない右手で藤崎の頭を掴み、必死に離そうとした。 何と言っても離れず、義人の腰を左手で力一杯に押さえつけ、藤崎は右手の甲に痛みが走るのを感じながら義人の精液を口の中で受ける。 「ぁああッ、あっ、、、なに、してんの、はあっ、はあっ、、出せって、藤崎!」 ゴグッ 「はあっ、はあっ、、え、ゴク!?」 藤崎の頭を掴んで口に入った精液を吐き出せと騒ぐ義人を無視して、藤崎は義人の脚の間で受け止めた精液をのど仏が動くところをまざまざと見せつけながら音を立てて飲み込んだ。 義人は呆気に取られてそれを見つめ、驚愕しながら藤崎の頭を振る。 (佐藤くん賢者タイムとかないんだ) 「飲んじゃった」 ひっ!!と義人からおかしな鳴き声が漏れる。 「ゲロでいいから出せ!!」 「タンパク質タンパク質、栄養」 「ダメだ出せ!!!」 先程まであれだけ喘いでいたくせに、急に意識をしっかりと持った義人は慌て出していた。 「あはははは、大丈夫だって、本当に」 「いやダメだろ!」 「そんな事より、ベッド行こうよ」 「え?」 そんな事より?と疑問を浮かべながら義人はそそくさと一旦パンツを履き直し、もう一度ソファに座る。藤崎は義人の前で立ち上がって突っ立つと、自分の脚の間でパンパンに膨らんだそこを見せつける。 「まさかフェラされて、自分だけ出したら終わりとか思ってないよね?」 「うわ、、わ、、」 目の前にある藤崎の盛り上がったスウェットを見て、義人の顔が赤くなっていく。 「まだいけるよな?」 グン、と腕を引っ張られてフラつきながら立ち上がる。 「あっ!!」 藤崎のそばに勢いつけて寄り添うように立つと、また脚の間を触られてビクッと腰を引く義人。 顔は真っ赤なまま、藤崎を涙目でぎろりと睨みあげた。 「何すんだよ、、!!」 「ベッド行こう」 「ちょ、!」 ふらつく義人を引っ張って寝室に入ると、電気をつけないまま、まず彼をベッドに座らせる。 藤崎は一度電気をつけに行き、ドアを閉めてから戻ってくると、義人に覆い被さりながらTシャツを脱ぎ捨て、ゆっくりと口付けてくる。 「藤崎、んっ、、がっつくなよ!」 「ごめん、余裕なくて」 苦笑いをする藤崎を下から眺め、義人は小さく息をつくと、またトクントクンと熱くなり始めた自分の鼓動を感じながら、降ってくるキスを受け入れる。 「ん、、、藤崎」 「ん?」 弱ったようにへな、と柔らかく笑った。 「好きだよ」 それを聞いて、藤崎はゆっくりと義人の着ていたTシャツを脱がせて行った。

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