44 / 46

第44話「名前」

黒いベッドの波の中、義人はTシャツを脱がされ、露わになった身体をよじって藤崎の視線から逃げる。そのくせ自分はTシャツを脱ぎ捨てた藤崎の筋肉のついた身体を舐めるように見つめている。 (エロ、、あれに抱かれんの?俺、) そう考えると、ズクンと腰の裏が重くなる。 「ダメだよ動いたら」 立てた脚の間にいる藤崎が、義人に覆い被さりながらそう言った。 「パンツいらないなあ」 「あっ、またかッ!」 グッと持ち上げられ、ピタ、と揃えられた脚。 容赦なく剥ぎ取られて行く下着をわずかに抵抗して脱がされないように試みるが、虚しくスポーンと引き抜かれ、ベッドの下にポイと捨てられる。 「肌、白いね」 「ああ!?」 「不機嫌やめてよ。楽しい事するんですから」 「え?、っん」 再び開いた脚の間から藤崎が義人の上に乗る。 ちゅ、と軽いキスをされ、それから視線を絡めて、また深いキス。ぐちゃぐちゃにされていく自分が恥ずかしく、そしてどうにもこの快感に抗えずに義人は藤崎の首の後ろに腕を回し、ぎゅ、と少し抱き寄せた。 「ん、んっ」 「はあ、、」 再び立ち上がってきたそこを、藤崎が直接手で触れて撫でてくる。こそばゆい小さな刺激が走り、ピク、と義人のまぶたがひくつくと藤崎は愛しそうにそれを眺め、まぶたをやんわりと撫でた。 「あっ、、はあ、んっ」 「ん、勃ったね」 「う、、いちいち言わなくて良い」 「何で?俺のもだから大丈夫だよ?」 「え?」 右手が藤崎のそこに誘われて、脚の間のそれに押し当てられる。 「ッ!」 先程目の前で見せられてパンパンなのは分かっていたが、スウェットのズボンを脱ぎ捨てた藤崎のボクサーパンツの越しのそれ触れると、形や大きさ、熱までが義人の手の甲に伝わってきてしまう。 恥ずかしくもありながら、義人はツツ、と中指の爪の先で意識的にそこに触れる。ピク、と藤崎の腰が揺れた。 「すけべ」 「っ、、ご、ごめん、」 楽しげな声にそちらを見上げると、大人びたいやらしい顔で笑いながら義人を見下ろす扇情的な瞳と目があった。 「うそ。大丈夫だよ」 「ん、、」 「同じだから、大丈夫」 「、、うん」 途端に優しい顔になり、義人の頬が撫でられる。繰り返ししてくれるこの仕草が、義人の中に安心して良いサインとして少しずつ刷り込まれて行っている。 「こっち向いて」 「ん、キス?」 「うん、しよう」 とろんとした顔で頷くと、キスが降ってきて、義人は今度は頑張って舌を出し、藤崎の舌が絡まると自分からそれを撫でるように動かす。 角度を変えて何度もしながら、下半身は手でしごかれ続けていた。その内、それを扱いていた藤崎の左手が、移動して、こともあろうに後ろの穴に触れてきた。 「ん"ぅッ!?」 (なに、なに!?何だ!?) 拒絶しないといけない。 身体がそう悟って抵抗しようとするが、誤魔化すようにキスが激しく深くなって行く。 「んっく、、んんっ」 呼吸させない勢いで舌が舐られ、絡んで、解けて、また舐られる。 穴に触れた指先は、トン、トン、トン、とゆっくりそこを刺激しているだけでそれ以上は何もしない。代わりに、藤崎の右手が腹の上に乗り、そこから段々と肌を滑って上昇し、ぷっくりと膨れた義人の左胸の乳首の周りをゆっくりと撫で始める。 (あ、あれ?何か、変) 「んっ、はあ、」 穴に触れる指は一定のリズムでそこを刺激したままだ。やっと唇が離れた義人は胸を膨らませて呼吸をし、藤崎の頭が視界から消えて、胸元にあるのを見下ろした。 「はあ、、はあ、、なに」 何か変だろうか。 聞こうとした瞬間に、右の乳首にねっとりとした温かいものが当たる。 「ぁ、あっ」 そんなところで感じた事もない筈なのに、声を出さずにはいられなかった。 「おい、藤崎、やだってそんなとこ!」 「でも可愛いよ?」 「だから、あっ、可愛いってなに、、あっ」 服が擦れても何か当たっても気にしたことがないのに。脚の間を触られたとき程刺激も来ないのに、何故か乳首を舐められる度に切なくなって声が漏れる。 実を言うと少しだけ、チリっとした何かが走りそうな感覚はあった。 「藤崎、そこ、感じない、おれ」 「声出るのに?」 「違う、んんっ、、違うんだって」 「もう少しだけやらせて」 執拗にぺろぺろと小さな突起を舐められる。右に、左に、上下にこねられていると、段々とジンジンと熱くなってくる気がした。 「はあ、、っ、はぁ」 ぴく、ぴく、と腰が揺れるのは、乳首を舐められているせいなのか、それとも後ろの穴を突かれているからなのか。 義人の頭の中で段々と混ぜこぜになっていって分からない。 「あ、あ、、は、んっ!」 カリ、と今度は穴がむず痒く引っ掛かれると、ビクン、と腰が跳ねる。義人は目をつぶってその快感に無意識の内に集中しようとしていた。 グリッ 「ぁあんっ」 穴を強く押されながら指を捻られて、同時に左の乳首を引っ掻かれ、右は藤崎の舌によって強く肌に押し付けるようにしてこねられる。 一気に快感が触られていない義人のそそり立ったそれに集まって、ピン、と足の指を伸ばした。 (だ、ダサい声出た) 「可愛い、佐藤くん」 藤崎は楽しそうに舌を這わせて乳首をなぶり、後ろの穴に指を強く押しつけ、入っているかもいないかも分からないくらいでグルグルと小さく指を動かしている。 「あっ、んっ、んっ」 勃ちっぱなしのそこが藤崎の肌に擦れると、直接脳まで響く快感が身体を走り抜ける。 グリッ 「んわ、んっ!」 何度か同じことを繰り返されると穴がひくひくと動き始め、それを見計らったように藤崎が右手をベッドの下の方に伸ばしながら起き上がる。 「あ、ぁ、、?」 きゅぽっ 「、、ん?」 何かの蓋の開く音が寝室に響く。 ぼーっとしてきた頭で必死に何かを考え、視線をぐるぐる回しながら藤崎の手元を探す。立てた膝の向こうで何かのボトルからとろんとした透明な液体を左手に馴染ませているのが見えた。 「藤崎、それ、なに、、?」 はあ、はあ、と小さく息をして、義人は甘ったるい声で聞く。 「ローション。多分後ろ中々入らないから、ゆっくり慣らすね。痛くしないようにするから」 「後ろ、、俺、尻の穴は嫌だ」 もうほとんど理性は流されて機能しておらず、本当は少しだけ触られた事がないそこに触れられて気持ちいいくせに、義人は強がりのように意地でそう呟く。 それすら可愛らしい声で甘えているようにしか聞こえず、藤崎はニコ、と優しく笑い返してローションを馴染ませた左手の中指を穴に押し当てながら、ゆっくり義人に覆い被さってくる。 「可愛い。何されるか分かったんだ?」 「嫌だ、ぁんっ」 藤崎の体温で少し温まってはいたものの、ローションは義人の肌にはまだ冷たかった。 ビクン、と腰を跳ねさせ、怖さから藤崎の首に腕を回して切ない表情をして彼を見上げる。 「ッ、、佐藤くん、可愛い」 いつの間にか義人の方が扇情的な雰囲気を纏っていた。 「可愛い、可愛いよ」 首の後ろに回された義人の腕に応え、義人を見下ろしながら何度も藤崎はそう呟く。暫く様子を見て穴をさすっていた指が、じょじょに力を込めて中に入ろうとしてきていた。 「ぁあっ、だめ、んあぅっ」 「気持ち良くない?痛い?」 「あ、はあっ、分かんない、ぁあ」 「佐藤くんごめんね、一回放せる?こっちも一緒に触ってみるから」 腕の束縛を解くと、藤崎は身体を起こしてまた脚の向こう側に行き、そそり立ってダラダラと我慢汁を垂らす義人のそれに、右手にもローションを絡ませて触れてくる。 「あッ!」 にゅる、にゅる、と優しくストロークを長く扱かれると、ビリビリと足の指の先まで甘い電流が広がって行く。 「はあっ、、はあっ、んっ」 亀頭の先端を人差し指でくちくちとほじられ、残った指は亀頭全体をゆるく揉んでいる。 「それ、ダメ、何か来る、んんんぅ!」 射精ではない違う感覚は切なくて、少し苦しい。火傷させられているように熱くしんどいのに、あくまでそれを触られている快感が義人の腰を突き抜けて行く。 「ダメ、あっ、ダメッ」 切なくて、苦しくて、それでも気持ち良くて、味わった事のない感覚ばかりにまた涙が溢れている。 「佐藤くん、可愛い。少し力抜ける?ここから」 ぐりぐりと押されている穴から、こんな状態で力を抜けと言われて義人は考える事もできず必死に頭を振った。 「無理、無理!!」 亀頭を藤崎の手が先端だけぐるぐると撫で回している。 それは切なさを加速させていき、義人の手がシーツを掴み、込められる力一杯に皺を作り波を乱して行った。 「それやめてッ、頼む、藤崎、ぁ、ああんッ」 「ここの力抜いてくれたらやめる」 「そんな、ことッ、、ん、!!」 「佐藤くん、大丈夫だよ。気持ちいいんだね。怖くないよ」 「やだ、いやだあッ、怖いぃ!」 ぐっ、ぐっ、と射精感よりも苦しくて切ないものが込み上げてくるのに、うまくそれを出すことができない。呼吸が苦しくて駄々をこねるように泣き始めるが、それでも藤崎はやめてくれない。 「力抜いて」 「っふ、んっ、ンッ」 絶対にやめてくれないと分かると、腹の下に集まる快感や込み上げてくる射精感に似た何かに耐えながらゆっくりと閉じかけていた脚を開き、ふぅ、ふぅ、と息を吐き枕を噛みながら集中して後ろの穴から力を抜いていく。 「可愛いよ、佐藤くん。いい子だね」 力が抜けた瞬間に、一気に藤崎の指が後ろの穴に押し入ってくる。 「ぁああッ、、!?」 焦らされ、解されたそこは割とすんなりと指を受け入れて行き、ローションで滑りがいいそこに藤崎はつぷぷ、と指を飲み込ませて行く。 「ッあ、んっんっ!」 穴の浅い部分でゆるく指を出し入れされる。出て行くだけの場所の筈が、戻ってくる指の妙な感覚にぶるぶると足が震え、義人は気が緩むと唾液が口の端からこぼれそうだった。 「も、いや、だあ、、!」 やたらと切なくなるあの手の動きは止み、今はゆっくりと藤崎の右手にそこを上下に扱かれている。たまに亀頭の先をこねられ、たまに亀頭のすぐ下の辺りの裏筋をぐいと力を入れて押し上げられては腰が跳ねた。 「あッ、なに、やめッ、!!」 藤崎の指が穴の中でクイと曲がり、性器の裏側辺りを擦ってくる。それが気持ち良くてまた息が上がった。 「んあッ、あッ!」 「ここ気持ちいい?」 「ダメ、だって、ぁあ!」 ダメと言っても藤崎は執拗にそこを攻めてくる。 「はあ、んっ!」 汗ばんだ身体をよじるけれど、義人がそこから逃げられるわけもない。 「はあ、、、可愛すぎ」 藤崎はそれを見下ろしながらため息まじりにそう言って、下着の中で苦しそうに勃起している自分のそれに視線を移す。 (そろそろ辛い) 義人の感度が最初からここまでいいとは思ってもいなかった。まだまだ開発しないとと思うところはあるけれど、藤崎は満足している。 何より義人が可愛くて仕方がなかった。抗いながらも自分の腕の中で乱れて行く愛しい人は肩で息をしながら、指の角度や曲げ方を変える度に腰を跳ねさせて嬌声を上げている。 (好きだ) 愛しくて堪らなくて、そのせいで自分のそこも痛いほど勃っている。 藤崎はゴソ、とゆっくりボクサーパンツを脱ぎ捨ててベッドの下に落とすと、だいぶ解れたそこからズルズルと指を抜き出して行く。 「あっ、、?」 下腹部の圧迫感が消えた事に違和感を感じて、義人が怖がりながらもこちらを見つめる。藤崎は再び義人に覆い被さりながら一度、ちゅ、と軽く義人にキスをした。 「入れるから、力抜いて」 ぴと、と穴にあてがわれた熱に、ビク、と義人の体が震える。 「っ、こ、怖い、」 痛いのは嫌いだ。苦しいのも。 涙目が藤崎を捉えるが、彼は優しく笑い返してまたキスをしてくる。 「嫌ならやめるよ。大切にしたいから」 「ぁ、、、」 「こんな事で嫌いになったりしない」 ちゅ、ちゅ、と何度もキスをされ、義人は小さく唸って藤崎から視線を外す。 「、、、する」 震えたような声に目を細めて、今度は深く藤崎が口付ける。 「ん、ふっ」 「いいの?佐藤くんの初めて、俺にくれる?」 するん、と藤崎の右手が義人のシーツを掴んでいた左手にゆっくりと絡まって、義人は胸を落ち着けながら藤崎の方を向いた。 茶色の瞳は緩く、彼を安心させる色で揺れている。 「やるから、愛して」 精一杯の誘い文句が愛しくて藤崎は「ふふ」と笑い、左手で義人の穴にあてがっているそれをぐぐ、とゆっくり奥に押し込んでいく。 「いくよ、力抜いてて」 入り口が狭く固く、ローションを塗っていても中々入らない。 義人は大きく息をして力を抜き、藤崎のそれを受け入れようともがいた。 「あ、ぁ、、んうッ!!」 ぬる、と急に入り口から先程の指とは比べ物にならない太さのものが入ってくる。 異物感に耐え切れず、義人は苦しげに手を繋いでいない右手で藤崎の肩を掴み、爪を立てた。 「ッあ、ゔッ、ゔゔゔっ、、!」 (痛い、いたい、、苦しい) ゲホ、と絡まる息を吐き出し、逃げるようにシーツを掴んで手繰り寄せる。 「っん、、ごめんね、佐藤くん、ごめん」 入り口の強い締め付けが堪らず、藤崎は何度も大きく呼吸している。入れた途端に快感が腰をついてきて義人の左手を力強く握り返し、高まってくる射精感を堪えた。 (ヤバい、、) 奥に窄まって行く訳でもない穴の中は軽く藤崎のそれを包む生暖かい壁に覆われている。入り口がぎゅうぎゅうと締め上げては刺激がつんざいて行く。 「ぐ、る、しぃッくる、しいッ」 「ごめん、ごめんね」 最後まで入れて一度落ち着こうと藤崎が腰を進めると、堪らず義人は声を上げる。ギチギチと右手の甲にいくつもの引っ掻き跡が残るが、藤崎はそれを気にせず、空いた左手で義人のものを掴んで扱き始める。 「あっ、いま、やめろ、ッ嫌だ!」 「気持ち良くするから、っん、、大丈夫だから」 根本までグググ、と入れ終わると義人の喉がつまる。 「っん、ぅ、えッ!」 「息ッ、して、、息して、佐藤くん」 「ひあ、あっ藤崎、まだ、動かないで、!」 「良くなるまで待つから、はあ、、ゆっくり息して、佐藤くん」 藤崎の声を聞いて少しずつ息をする。膨らんでは沈んでいく胸を見て、藤崎は少し安堵した。あまりにも苦しそうな義人が可哀想でならなかったのだ。 「はあっ、、はあっ、、」 段々と圧迫感と異物感を受け入れ始める。 「痛くない?」 「ん、、だ、大丈夫、、っん、動く?」 「ん。ゆっくりするから痛かったら言って」 「うん」 腰がゆっくりと動き始めると、義人はよく分からない感覚にまた息を荒くしていった。自分の中を藤崎のそれが出たり入ったり、けれど抜けずに何度もそこを擦っている。 「あっ、、なんか、変、になる!」 扱かれ続けるそれから腰に響く快感と、ゆるゆると擦られる穴の感触が混ざりそうで混ざらない。 「佐藤くん、ここ、自分でできる?」 右手が引かれ、先程まで上下に大きくさすられていた自分のものに触れる。 「えっ?、ん、んっ」 「ごめん、奥、、はあ、、突きたいから、自分で気持ち良くしてあげて」 義人の右手にそれを握らせ、その手ごと何回か扱くと甘い声が漏れてくる。 「いい?できる?」 「で、きる、、んっ、、んんっ」 自分自身でそこを刺激する。速さも力加減も慣れたもので、自分が一番気持ち良くなるように手を動かしながら、藤崎の左手が腰を掴んでくる感触にぴくん、と反応した。 「ごめ、ん、、結構、限界」 「えっ?、あっ、」 掴んだ腰をグッと自分の方へ引き寄せながら、ズン、と抜けかけていたそれを一気に根元まで義人の穴に押し込む。 「ふ、あッ!?あ、なに、んんんッ!」 「ごめん、」 一気に激しさが増した。 「アッアッアッ!あん、んッ、はげ、しいッ、ううッ!!」 ケホ、と咳き込むと口の端から少しだけ唾液が枕に流れる。 「っん、ぐっ、ンッ、んん、アッ!」 上手く息ができない。増した圧迫感と闘いながら必死に酸素を求めて胸を膨らませ、そこに触れている手を動かして気持ちの良さを勝たせて行く。 段々と後ろの感覚が愛しく、切なく、気持ちの良いものに変わっていっている。 藤崎とセックスをしてる。初めて好きになった人と繋がって、誰にも見せた事のない姿を見せてしまっている。嬉しさと恥ずかしさが混ざって、義人はぐちゃぐちゃになった。 「んぁあッ、だめ、気持ちいいッ、」 段々と迫ってくるよく分からない感覚が怖くて、泣きながら藤崎を睨むように見上げた。 「気持ちいいね、俺もいいよ、すごく気持ちいいッ、、ね、可愛い、佐藤くん、可愛い」 嬉しくもなかったはずの言葉ですら今は愛しくて仕方ない。 「ぁ、アッ、い、イク、?イキそう、藤崎、アッ!」 「ちゃんと言って、ンッ、、なに?どうしたいの?」 もはや何処がどう気持ちいいのかすらよく分からない。ただ、パンッパンッと肌の当たる音が一番耳につく。 「ああッ、ぅう、く、お、」 「んっ、、、なに?佐藤くん」 「く、あっ、、くお、ん」 「えっ、、?」 どうしてそんなに可愛いのだろう。愛しくなれるのだろう。 義人の手を握る手に力が入った。 「も、一回、、呼んで」 余裕のない声と、絶え間なく続く繋がった部分から響く粘着質な体液の混ざる音。 藤崎は見つめる先の彼の目が、自分を煽っているように思えた。 純粋で何も知らないくせに、快感に負けてだらしなく口を開けて呼吸し、喘ぎながら「もっと」と言いたげに目を細めてくる義人。 「くお、んッ、イク、久遠ッイクから、イクからぁッ!」 「ッはは、義人、、っん、、義人、可愛い」 孕んだらいいのに。 そんな事が頭をよぎっていく。 「あんッ、あんッ、も、い、イッていい?久遠、イキたい、い、かせてッ、ンッ」 「イっていいよ、義人」 「あ、あぁあッ、ダメ、ダメえッ!イクイクイクッ!!、んぁあッ!!」 ビュルル、と義人のそこから大量の精液が勢いよく流れ出て腹の上に広がる。 「ンッ、、ごめん、出す、んッ!」 倒れ込む藤崎を無意識に右手で必死に抱きしめ、肩で息をして、穴に出される温かい感触を感じとって義人は大きく息をついた。 「はあ、、はあ、、はあ」 お互いの吐息が重なる。それすら愛しくて見つめ合うと、藤崎がまた深いキスをしてくる。 余裕がないくせに慣れたように舌をお互いに絡めながら、落ち着くまでそうして身体を寄せ合っていた。 「ん、、、ふふ、後ろでイケた?」 意地悪な質問は呼吸が落ち着いてきてからすぐに投げられた。 「ンッ、、た、多分」 正直どこが1番気持ち良かったのかすらもう分からないでいる。 「義人」 「、、久遠」 必死に呼び合った名前を確認するように再び呼び合うと、少し恥ずかしい気もした。けれど何故か、お互いにそれはしっくりと来る。 「好きだよ、義人。可愛かった」 耳元で聞こえるその声に、顔は見えなくてもきっと今すごく嬉しそうに笑っているのだろうと想像はできた。 義人は藤崎の身体を抱きしめながら、触れ合っている肌から感じる優しい体温に目を閉じる。 「ん、、可愛くはねえけどな」 「えーー、俺にとっては最高に可愛いのに」 「うるせえなあ」 本当は照れ隠しで、藤崎の首元に顔を埋める。 「、、好きだよ、久遠」 「うん」 どちらも嬉しそうな声だった。 「シャワー浴びようか」 「うん」 そう言いながら、もう少しだけベッドの上で呼吸を整える。 それが何だか、愛しい時間に思えた。

ともだちにシェアしよう!