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【7】恋はセラピー? ピヨたんを懐かせるための100の方法……⑥

 午後、周防からデートに誘われた。  そのまま外に出ようと言われ、一気に心の中がもやもやした。ワンピース姿で外へ出るのは嫌で、周防の洋服を借りることにした。 「サイズ、合わないんじゃないのか?」 「こ、こういうのがいいんですよ。彼シャツとかボーイフレンドなんとかっていうやつで――」 「ふむ」  周防のチノパンを借りて裾を折る。シャツも腕まくりして上手く合わせた。鏡の前で確認する。うん、カジュアルだけど悪くない。周防に向かって両腕を広げて、軽く首を傾げて見せた。 「どうですか?」 「か……か、か、可愛い。天使だ」 「え?」 「意味が、意味が分かったぞ。俺の服がぶかぶかになってるのが、そのなんとかっていうやつの醍醐味なんだな。これは凄い。尊い。そして可愛い、可愛すぎる!」  周防は両手で顔を押さえながら悶え始めた。起こされたくない睡眠中の猫のように、両手で顔を覆ってふにふにしている。  どうしたんだ、一体。動きが変だ。 「過剰なまでのオーバーサイズ感が俺の庇護欲をそそってくる。正規のサイズで正しく着用している状態では共存し得ないそれらの要素が新たなシナジーを生み出している。彼氏のシャツを着るという単純な行為が、これほどまでにインパクトを出せるバリューに成り得るとは……驚きだ」  周防は何かに感動していた。 「あの、どうかしましたか?」  もう一度、周防に向かって両手を広げて見せる。 「えぐってくる……」 「エグッテク?」 「可愛さで、俺の鳩尾を無自覚にえぐってくる、罪深きアヒルの子ピヨたん」 「え? なんですか?」 「鳩尾えぐるさんだ」  周防の呟きを聞き返すと、なんでもない、いいんだとスルーされた。 「可愛くてたまらない」 「はあ……」 「小さくて純粋で尊いな」 「……そ、そうですかね」 「ああ、でも、メイクとウイッグはしっかりしていてくれ。スーツや女装姿はそれなりに免疫があるが、その格好はどうも……」  周防は冷静な顔であたふたしている。やっぱり様子が変だ。  そうだ、写真も撮らないとと、跳ねるようにリビングへ向かった。スマホを手に急いで戻ってくる。戻ってきた周防に頭をなでなでされた。なんだか忙しないが、凄く嬉しそうだ。 「……楽しいですか?」 「楽しい」  ――楽しいならいいか。  寝室の鏡に映る周防はとても幸せそうに見えた。

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