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【7】恋はセラピー? ピヨたんを懐かせるための100の方法……➆

 二人並んで外へ出る。  周防は紺のウィンドペンジャケットと白シャツの組み合わせで、全身から知的でスタイリッシュな雰囲気が漂っていた。長い脚にフィットしたグレーのスリムパンツもよく似合っている。部屋着とスーツ姿以外の周防を見るのは初めてでドキドキした。  ――なんか本物のデートみたいだな。  ウイッグと軽いメイクはしている。けれど、陽向の服装はカジュアルだ。それも周防の服だ。  街に出て通りを歩いた。街路樹は添え物のパセリのように綺麗に剪定されていて、ミニチュアのようなお上品さと可愛らしさに溢れている。道行く人もよそ行きの顔と格好をしていた。  そんな綺麗なものを見ても、周防以上に惹かれるものはなかった。 「何か欲しいものはあるか?」 「……欲しいものですか? うーん、何もないです」 「入中は無欲だな」 「そうですか?」 「ああ。入中のそういうところが好きだ。コンサルは見た目ですぐに分かる。スーツや持ち物に金を掛けているからな。だが、入中は決して飾らない。身の丈に合った良質なものを選んで大事に着ている。物を大切にするし、目に見えないものにバリューを見出そうとしている」 「……はい」 「その上、常に明るくて元気で前向きだ」  なんか褒められ方が幼稚園児みたいだなと思った。けれど、嬉しい。 「嘘がなく、思っていることは全部、顔に出る。ふわふわしていて頼りないところもあるが、任されたことは最後まで責任を持ってやるし、人に対して感謝の気持ちを忘れない」 「なんか、ありがとうございます」 「いい青年だ。そして、頭の先から足の先までくまなく可愛い」  なんだかくすぐったい。陽向は照れ隠しの苦笑いを返した。  今までの人生でイケメンだとか頼りがいがあるとか、そういう男らしい褒め方をされたことはほとんどない。けれど、可愛いという言葉は小さい頃からたくさん言われてきた。それでも周防に言われるのが一番嬉しい。 「おいで……」  周防が指先をこちらへ伸ばしてくる。手を繋ぎたいのだと分かった。  恋人のような自然な仕草が凄くカッコいい。陽向は本能的に自分の手を伸ばしていた。  ――こんなふうに並んで歩くのは初めてだ。  ふとショーウインドーを覗くと女装姿の自分がいた。パンツスタイルでも、髪は長く唇は赤い。手を重ねながら、この姿でいることがほんの少しだけ辛くなった。気持ちを無理やり切り替える。  陽向はゆっくりと足を止めた。 「あ、あの――」 「どうした?」 「一つだけ、我儘言ってもいいですか?」 「ん?」 「さっき話してたボルダリング、あれやってみたいです。ウイッグとか外して、口紅も落としていつもの俺で」 「買い物はいいのか?」 「あ、はい。欲しいものはないし、なんか、体動かしたいなって」 「分かった。ちょうどいい、行こう。装備や道具を一から貸してくれるところがある」

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