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【9】その感情にクレジットをつけるなら……②

 ふと気になった。  周防も自分のことをこんなふうに可愛いと思っているのだろうか?  女の子みたいに可愛い。  女の子みたいに綺麗。  だから優しくしたい。愛でて可愛がりたい。  ――男の本能だから。  嫌だなと思った。  もしそれが事実なら、本当に嫌だ。  自分は女じゃないし、ピヨたんでもない。  ――俺は俺だ。  けれど、そんなことを思ってなんの意味があるんだろう。陽向は周防の恐怖症の治療しているだけだ。ふざけているわけでも、遊んでいるわけでもない。全ては周防の治療のためなのだ。何をどう思われようと治療には関係のないことだ。  周防の幸せのため。そして、周防の未来のため――。  周防が女性と交際して、結婚して子どもを持てるように、そんな当たり前の日常を手に入れられるようにするためだ。  自分の未来は? 何がしたい? 何が望みだ?  俺は――。  色々なことが頭の中を回る。仕事で結果を出したいし、周防の役に立ちたい。全てのものにバリューを見出せるような一流のコンサルタントになりたい。キャリアも築きたい。でも、明確な未来は? 自問自答しても答えは出なかった。 「けどさ――」 「何?」 「おまえなんか雰囲気変わったよな?」 「そりゃそうだろう、性別変えてるんだから」 「いや、そういう意味じゃなくて」 「え?」 「コンサルとしての責任感に拍車が掛かったつーか、やる気に満ちてるじゃん。やるぞやるぞって感じだよ」 「それは元からだよ」 「そうか?」 「そうだって」 「やっぱあれ? 周防さんのプロジェクト入ったから?」 「え?」 「俺も一回でいいから周防さんと仕事したいんだよな。資料作りは手伝ったことあるけど、PMとして仕事させてもらったことないからさ。おまえはいいよな、周防さんのお気に入りで」 「お気に入りって……全然、そんなことないよ。ゆるふわ系のくそ虫がって思われてる」 「は? それは冗談だろ。周防さん、ずっとおまえのこと見てたし、いつも可愛がってんじゃん。俺がいちゃいちゃしたら視線が怖かったし」 「…………」 「おまえは人に可愛がられるのが上手いからな。愛の才能? 愛でられキャラ? ま、実際、一生懸命で明るくていい奴だけどさ」  人に可愛がられるのは幸せなことだ。でも、どれだけたくさんの人に好かれても周防に好かれなければ意味がない。  意味が……ない。  そう思ってしまう。  ――ああもう、この間から周防のことばかり考えている。  やめたいのにやめられない。

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