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【10】ズレた分だけキミがスキ……⑩

「それ……反則です……」 「反則?」 「もう、やめて下さい。あなたは狡い」 「入中?」 「やっぱり……狡い」  周防の笑顔に一瞬で心を奪われた。  出会った頃、石にされると思っていた切れ長の目が糸のようになり、口角が驚くほど美しく上がって、綺麗な白い歯が見えた。全ての動きが完璧で美しく、陽向は眩しいものを見るように周防の顔を眺めた。 「狡い……から」  呟きながら周防の肩を両手で叩く。すると周防が困ったように、また微笑んだ。 「……だから……出会った頃のクールな鉄仮面で、俺のことをくそ虫って目で見て下さい。そうじゃないと俺は――」 「入中……」 「そうやって不用意に俺の心を掻き乱さないで。それ全部、反則だから」 「俺が嫌いになった?」  陽向は首を左右に振った。 「でも……そんな周防さんが好きなんです。本当に……好き」  陽向はしばらくの間、泣き続けた。これまで抑えていた感情が一気に噴き出して自分でもどうしようもなかった。昼の街頭でわんわん泣いている陽向を、周防は優しく抱き締めてくれた。それが嬉しくてまた涙がこぼれた。

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