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【11】Long kiss ××× Sleep tight……④

 コンサルタントが一つのバリューを出すためにどれほど努力をしているか。価値を築くのは一生だが、失うのは一瞬だ。マイナスのイメージや風評被害はあっという間に広がってしまう。  人間はマイナスの情報に対して敏感な生き物だ。それは一種の防衛本能なので防ぎようがない。悪い噂は良い噂の十倍の速度で伝わると言われている。過去には女子高生が何気なく発した噂話で銀行の取り付け騒ぎが発生した事件もあった。噂や風説には一企業を潰すほどの力がある。 「おそらく、ハイランドだけじゃないだろう。ナレッジグループは同じ手口で他のホテルの参入も阻止しているはずだ」 「そんな……」 「俺に考えがある。まだ、詳しくは話せないが、多分、成功すると思う。協力してくれないか?」 「もちろん、周防さんのためなら協力します」  本当のことを言えば、コンサルタントがそこまでする必要はなかったが、陽向はクライアントのために、どうしてもこの問題を解決したかった。ハイランドに最もいい形でホテルの誘致を行いたい。今回のプロジェクトを確実に成功させたかった。  スマホや鞄を奪われたのは自身の失態だ。仕事でできた悔しさは仕事でしか返せない。コンサルタントとして周防が自分と同じ気持ちでいてくれることが嬉しかった。 「今日は何時に上がれる?」 「まだ分かりません」 「そうか。終わったら連絡してくれ」 「分かりました」  周防は先に部屋を出たが、ドアを開ける前に陽向の頭をなでなでしてから外へ出た。  仕事中のキリッとした周防もカッコいいが、こんなふうに甘さを見せられるとどうにかなりそうになる。部屋で一人、うおっと悶えながら必死でビジネスモードを装いつつ、窓ガラスに映った自分の顔を見て陽向は苦笑した。周防にメロメロのピヨたんがそこに映っていた。

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