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【12】優しく触れて……③
陽向はプールから上がると己の体が変化していることに気づいた。周防の逞しい体にずっと密着していたせいか無意識のうちに興奮してしまったようだ。もじもじしていると周防が自らの体で陽向の下半身を隠してくれた。
「すっ……すみません」
「大丈夫だ」
「仕事で……偵察で来たのに、浮ついてしまってすみません。周防さんといられるのが嬉しくて楽しくて、凄く興奮してしまいました。あの俺、ちょっと抜いてきます」
潔くそう言うと、周防が頭の後ろを撫でてくれた。
「可愛いな」
「いやらしくて、すみません」
「いやらしくなんかない。一緒にシャワー室へ行こう」
耳元で甘く囁かれる。低い声に鼓膜をくすぐられて鼓動が跳ねた。
二人でシャワールームに入ると周防が優しく背中を流してくれた。温かいシャワーが心地いい。湯気の中、顔を上げると男らしい周防の顔が近くにあった。前髪を上げた顔が色っぽく、いつもよりはっきりと見える額や眉の美しさに心臓が高鳴る。
――ああ……。
やっぱり、この人が好きだと思う。
両手で優しく耳の後ろを取られて、そのまま口づけられた。シャワーの中でする甘いキスに体を溶かされる。
美味しい。口の中まで温かくて気持ちがいい。
「んっ……」
「俺で興奮してくれて嬉しい。あの時は朝勃ちだと言っていた。今日は違うんだな……」
「あっ……やっ――」
優しくキスされながら水着を脱がされる。自分のモノがウエストゴムの隙間から勢いよく飛び出すのが分かった。
「恥ずかしいです……」
「恥ずかしくない。これは愛の証だ」
周防はそう言いながら陽向のペニスを優しく握り込んだ。ゆっくりと愛おしむように上下に扱いてくれる。周防の大きな手の感触がたまらなく気持ちよかった。
――ああ、周防さんの手だ……。
鞣した革のような手の甲がシャワーを弾いているのが見える。節は骨ばっていて美しく、長い五本の指が陽向の性器にしっかりと絡んでいた。自らの欲望の強さを教えるように陰茎全体を包み込まれる。
「入中のここは、生まれたての雛みたいに温かくてトクトクしてるな。凄く元気だ。入中らしい」
「そんな評価、恥ずかしくて――」
「触っている方も気持ちがいいぞ。ずっと触っていたくなる」
しなりに合わせてぐいと扱かれる。先端部分は輪にした指で強く握り込まれた。敏感な裏筋をくすぐるように刺激されて卑猥な声が洩れる。
――あ……気持ちいい。
眩暈に似た痺れが全身に走った。
また顔が近づいて唇を吸われた。自ら舌を絡ませると、好きという気持ちが溢れ出て止まらなくなる。
キスされながら手で性器を愛撫される。もう片方の手で乳首を摘まれて甘い衝撃に襲われた。ジンとした快感が脊髄を伝って下半身へ集まっていく。初めて経験する快楽にもう立っていられない。それを察したのか、周防が陽向の脚の間に膝を入れて体を支えてくれた。
何もかもが優しくて、尊い。
周防にされるとどうしてか泣きそうになる。
恥ずかしいのと居たたまれないのと、幸せなのと気持ちいいので、自分の感情が分からなくなる。いつも自分でしている行為なのに深い愛情を感じる。なんでなんだろう。セックスですらないのに。
「あっ、もう……」
「どうした?」
「周防さんの手が……気持ちよくて」
「俺もだ。しなやかで張りがあって、綺麗なピンク色をしていて、とにかく可愛い。こんなふうに、真っすぐひたむきに硬くして、愛おしくなる」
「うっ……」
「愛を感じる」
ペニスを握られたままじっと見つめられて、頬がカッと熱くなった。
複雑な刺激と快感に頭がくらくらする。
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