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【13】求める体……②

 外へ出てからもしばらくの間、朝井はもだもだと抵抗していたが、周防の語気に怯んだのかしらを切るのをやめて大人しくなった。周防が鞄を開けるように指示すると、中に白い封筒が入っているのが見えた。 「幾らだ?」 「……三十万よ」 「一回、三十万なのか?」 「そうよ」  周防の問いに朝井は目を合わさずに答えた。 「毎週、決まった曜日にここへ来る。会う時もあるし、会わない時もある。その中で指示を受け、結果を見て報酬が払われるシステムか。今まで何回やったんだ?」 「こ、これが初めてよ。もういいでしょ!」  朝井は明らかに嘘をついていた。 「いいバイトだな。どうせ税金も払ってないんだろ」 「何よ、あんたたち。私のこと馬鹿にして。どうせ掃除しかできない……そんな女だって馬鹿にしてるんでしょ。私はね、子どもを三人も大学に行かさなきゃいけなくて大変なの。あなたたちに私の苦労が分かるわけないでしょ」 「掃除は立派な仕事だ。こんな金で大学へ行かせてもらっても、子どもが辛いだけだ」 「何よ……」 「子どもは全部、知ってるんだ。全部、分かってる。母親がどんなことをして金を稼いできたか、どんな気持ちでいるのか」 「……ふ、ふん」 「子どもだから分かるんだ……」  周防の言葉は少年の声のように鋭く響いた。それは、いつもより寂しい響きだった。

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