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【13】求める体……④

 部屋に帰ると陽向は周防を寝室へ連れて行った。 「陽向?」  ベッドの中では名前を呼んでくれる。それが嬉しくて、今日は一番辛い。でも、もう関係なかった。 「今日はしたい」 「ん?」 「最後までしたい」  そう言った陽向の目を周防はじっと見つめた。 「俺を抱いて下さい」  これまでずっとキスや手の愛撫しかしてこなかった。それが嫌だったわけじゃない。けれど、二人の間に決定的なものが欲しかった。多分、婚約者との間にあったそれが欲しい。決定的な愛の証。  ――俺も欲しい。  俺だって欲しい。俺だってできるから……。 「どうして今日なんだ?」 「特に意味はないです」 「本当にいいのか?」 「はい」  陽向は挑むような目で周防を見た。  優しいのは知っている。周防が自分を大切に想ってくれていることも。でも、もう余裕を見せないでほしい。その余裕を違うものに勘違いしてしまいそうだから。 「これまでのこと、満足じゃなかったのか?」 「そうじゃないです。周防さんは優しくて……全部、気持ちよかったけど、俺ばっかりが感じてて……それが辛かったです」 「そうか」  沈黙が濃密になる。  周防は陽向に迷いのない視線を向けた。 「一度始めたら……多分、手加減できない。それでもいいか?」 「いいです」  周防は分かったと呟くとそれ以上何も訊かなかった。  周防はどんな時でも優しい。キス一つにさえ愛が溢れている。その優しさが好きだったが、今日は少し強引なくらいに求めて欲しかった。  理由は分かっている。  ――その事実を知ってしまったから……。  周防は元から女性が駄目なわけじゃなかった。  多分、陽向に似た日菜子という女性を誰よりも大事にしていた。愛していた。  婚約者なら当然、体の関係はあっただろう。  周防は彼女を亡くしたショックで女性を愛せなくなった。抱けなくなった。それくらい深く、彼女のことを愛していたのだ。  ――悔しい。  周防の過去に嫉妬してるんじゃない。その事実に嫉妬している。  周防に抱いてもらえて、周防の人生を揺るがすほどに愛されていた存在に。  ――嫌だ。  嫉妬しても仕方がないのは分かっていたが、とにかく悔しかった。  俺も愛されたい。俺だって欲しい。俺だって……。 「んっ……」  角度を変えて舌を吸われる。ぴたりと合わさった口の中で舌だけが妖しく蠢いている。周防はキスしながら陽向の服を脱がせてくれた。少しだけ汗ばんだ肌を手のひらで撫でられる。首から鎖骨、乳首をよけてあばらから腰へ……そして最後、指先が乳首に戻ってくる。軽く摘んできゅっと揉まれるだけで声が洩れるほど気持ちがいい。周防は陽向の様子を見ながら、両方の乳首を愛撫してくれた。 「んっ……あっ……」  全裸でベッドに横たわり、暗い影になっている自分のペニスが腹の上で痙攣する。快感の大きさに合わせて動きをピクピクと変えた。次第に先端にとろりとしたものを滲ませ始める。 「中も……」  陽向が懇願すると乳首にあった手がゆっくりと下りていく。繁みを撫でられて、そこがすでに濡れていることを知った。奥まったところに周防の手が潜る。長い指が粘膜の中にゆっくりと入ってきた。予想以上に異物の存在を感じる。  ――怖い。  けれど何かが変わる気がした。 「あぅ……あっ、うっ……」 「大丈夫か?」 「大丈夫」  抜かれるのが嫌で平然を装う。正直、敏感に滑った粘膜の中に爪のような硬いものが入っているだけでも怖かった。周防の指の形を中ではっきりと感じた。  ――ああ……男とするセックスって、やっぱりこんな感じなんだ。  生々しいと思い、けれど、周防とならしたいと思う。

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