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【13】求める体……⑤
「あっ……んうっ……」
指が増やされる。ローション代わりのハンドクリームで襞を濡らされて、指を深く水かきのところまで入れられた。
「苦しくないか?」
首を横に振る。
「分かるか?」
「ん、うん」
脚を開かされて軽く腰を支えられる。周防の膝の上に下肢が乗るような体勢だった。
顔を上げると周防の手の指が二本、自分の中に入っているのが見えた。濡れたピンク色の粘膜を開きながらそれが前後する。ぬちゃっと卑猥な音がして、苦しさと気持ちのよさが交互に来る。
なんてエロティックで生々しいんだろう。こんな場所を暴かれて周防に何もかも見られている。普通なら恥ずかしくて死にそうなのに嫌じゃない。
みっともないところも、感じているところも、全部見てほしいと思う。
――それが本当の俺だから。
何もかも見てほしい。本当の自分を知ってほしい。
「あっ……はあっ……」
周防が中で指を曲げる。ちょうど性器の裏側あたりを撫でられると背中がビクンとするほど気持ちがよかった。そこが前立腺なのだと分かる。結構、浅い場所にあった。
円を描くように撫でられながら乳首を吸われる。両方の乳首を行ったり来たりしながらたっぷり濡らされて、最後、唇にキスされた。やっぱり口でするキスが一番感じる。甘くて優しい。周防のキスが美味しかった。
「周防さんも脱いで……」
「ん」
周防が乱暴に服を脱ぐ。あっという間に全裸になった。
「もう一度、裸でキスして下さい」
周防の背中を迎えに行く。香水の匂いと汗の匂いが混じって、頭がくらりとした。それだけで息が上がるほど興奮する。周防の匂いを胸いっぱい吸い込みながら、筋肉の硬さを堪能した。
舌を絡ませながら体を横たえて、二人が交わりやすい形にしていく。陽向の背中がベッドに着き、腰が少しだけ浮いて、立てた膝の裏側に周防の逞しい脚が入ってきた。
なんてリアルな体勢なんだろう。抱かれることを否応なく感じる。絡まった脚はビクともしなかった。もう逃げることはできない。
――ああ……。
とうとうセックスができるのだと思う。簡単なことじゃない。……男とするんだと思った。
準備も必要で、覚悟も必要で、全てのゲイの人がこういうセックスをしないことも知っている。本来、受け入れる器官ではない場所に他人の体の一部を挿れる。無理があるし、機能的にも不自然だ。それでもしたいと思うのは愛以外の何ものでもないと思う。欲望の極限的な到達点だとは思えなかった。
それよりももっと精神的な何かがこの行為にはある。
これまで周防は二人の行為の中で、交わることよりも陽向を感じさせることを優先していた。手や指や唇や舌を使って。その愛撫は愛情と優しさに溢れ、いつも陽向を天国に導いてくれた。答えの中心にセックスや繋がることよりも、陽向の快楽があった。
ああ、そうかと思う。
自分はこの幸せな日々の中で、きちんと与える側の人になりたかったんだ――。
周防は常に与える人だ。
仕事でも恋愛でもそれは同じで、誰かに何かを与えることが習慣になっている。自分が受け取るより先に、まず与える側に回り、ただ純粋に「与えること」に喜びを感じている。そこに何か見返りを求めることもない。
自分も与えたい。周防を感じさせたい。
自分を感じてほしいし、知ってほしい。
――周防のことが本当に好きだから。
周防にとって本当に特別な存在になりたい。愛を与えられる人になりたい。
「陽向……」
「周防さん」
視線が熱く絡んだ。わずかな期待と恐怖が入り交じって、心臓が暴れるほど打っている。体温が上がり、呼吸も速くなっていた。
周防の怒張で入口を突かれる。添える手がなくても狙いが定まるほど硬く勃起していた。
――あれが中に……。
「陽向」
もう一度、名前を呼ばれる。
入中でもピヨたんでも日菜子でもない名前。俺の名前。
陽向は覚悟を決めて周防の体を受け入れた。
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