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【14】ある日、アヒルの日……⑩
「陽向の中が熱い……」
「……周防さんも……熱いです」
ものにされるわけでも、犯されるわけでもなく、ただ、愛されるだけのセックス。そんな行為があることをこれまで本当に知らなかった。周防の優しさに包まれて、自分の体と心が徐々に解放されていく。
とにかく気持ちがいい。
挿れられるのも、抜かれるのも感じる。張りつめた亀頭で奥を突かれるのも、硬い幹で粘膜を擦られるのも気持ちいい。周防の形がぴたりと合って唯一無二の相手なのだと実感する。
セックスでこんなふうになれるのは周防以外にいない。
絶対にいない。
波のように揺らされて、深く潜らされて、掻き混ぜられて、逃げ場がなくなる。光の届かない海の底で悪いことをしているみたいだ。気持ちがいいのも、恥ずかしいのも二人きり。周防の姿しか見えず、周防の存在しか感じられない。
「陽向……」
体をぎゅっと抱き締められる。陽向は周防の腰に自分の脚を絡ませた。
足首をクロスさせると、お互いの下肢が隙間なく密着して一つになる。
もう、境界線も何もない。
一つの塊になって快楽を求める。
ともに溶け崩れる。
――ああ……。
揺らされて、貫かれて、意識が遠くなる。
周防の汗が霧のように落ちてきて、それさえも温かく愛おしい。
――好き。
周防の目が好きだ。声が好きで、匂いが好きだ。体のラインも男らしい手も、愛情深い性格も、仕事を最後までやり遂げる強さや誠実さも好きだ。
人としての強度が高いのはしなやかさを兼ね備えているから――。
陽向は優しいという言葉の意味を初めて知った。
「周防さん……もう……」
「陽向」
体が熱くて頭が変になりそうだ。
不意にキスされて涙がこぼれそうになる。
貫かれながら激しく唇を重ねられ、その熱情に、陽向も背中へ縋りついて応えた。
「好き……」
言葉が洩れて、気持ちが溢れる。
その瞬間、陽向は絶頂を迎えた。ほぼ、同時のタイミングで中にいた周防が弾ける。どくりと吐き出された飛沫の衝撃にまた強い快楽を感じた。
――気持ちいい……。
愛してると呟く男の声を聞きながら、陽向は白い世界へ意識を羽ばたかせた。
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