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【15】これからも、ずっと……④

 部屋に帰ってきた周防に駆け寄って飛びつく。  好きだと呟く前に力いっぱい抱き締められた。肺の中にある空気まできゅっと収縮する。 「あんなことしたら、俺たちのことバレるんじゃ……」 「大丈夫だ。コンサルタントとしてこういう宿泊プランもあると、ホテルの営業部に新しいプロポーズの提案をしただけだ。もちろん、入中にプロポーズするために、俺が勝手に計画したことだが」 「じゃあ、あそこにいた人たちは?」 「もちろん、ただのデモンストレーションだと思っている」 「周防さんお得意の、完全な仕事(コンプリートワーク)ですね」 「駄目か?」 「駄目じゃないですが、野村さんまでいるし……」 「俺の可愛い入中をピヨピヨにさせた罰だ。式では仲人をすると約束してくれた」 「……な、仲人……でも、嬉しいな」 「このプロポーズはデモンストレーションじゃないぞ。俺の本気だ」 「もちろん、分かってます」  陽向は周防の胸に顔を埋めた。  恥ずかしいのに嬉しい。嬉しいのに泣きそうになる。もうどうにかなってしまいそうだ。  周防が突然、その場で跪いた。ジャケットのポケットから何かを差し出してくる。すぐに指輪のケースだと分かった。周防が開けると中に銀色の指輪が光っていた。アヒルのくちばしを模したリングに美しいイエローダイヤが嵌っている。 「俺には入中しかいない。必ず幸せにする。だから、俺の家族になってくれ」 「周防さん……」 「笑顔の絶えない家庭を一緒に築こう」 「も、もう――」 「入中?」 「幸せで……幸せすぎて……どうしたらいいのか」 「入中……」 「……俺も……周防さん以外、考えられない。これからもずっと俺の隣にいてほしい。あなたが好きだから」 「俺と結婚してくれるのか?」 「もちろんです」  左手を取られて薬指に指輪を嵌められる。嬉しくて、幸せで、前が見えない。胸がいっぱいで苦しい。  指輪の上からキスされる。柔らかい唇の感触に胸が騒いだ。  気がついたら涙がこぼれていた。 「泣き虫ピヨたんだな」 「嬉しくて……家族とか、ホントに嬉しくて……周防さんとそうなりたかったから」 「それは俺も同じだ」 「周防さんを必ず幸せにします」  ――必ず幸せにする。  二人でいることに意味があるのだと思った。  周防を支えられる強い人間になりたい。  そして、周防を明るく照らせる優しい光でありたい。  ――周防の家族になりたい。  その夢が叶うのだ。

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