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【番外編】スケルトン・ラブ……②

「朝ご飯は、卵とパンとサラダでいいか? シリアルもあるが」 「あ、それでいいです。ありがとうございます。俺もなんか手伝いましょうか?」 「大丈夫だ。食べ終わったら一緒に出掛けよう。弁当はもうできている」  陽向はぎこちなく頷いた。 (あれ? 今日の陽向おかしいな。なんかよそよそしいぞ。昨日、俺なんかやらかしたかな)  聞こえる。もうはっきりと聞こえる。  やっぱり夢じゃない。  これは現実だ。  ――周防さんの心の声がだだ洩れだ。というか、俺の脳内に直接響いてくる。  あの夢の中の男め! 変な能力を授けやがって。なんてことするんだ、困るだろ!  もうどうすればいいんだ……。  陽向は頭を抱えた。 「どうした? 頭が痛いのか?」  周防が不安そうな顔で訊いてくる。陽向は首を左右に振った。 「なんでもないです……」 「そうか」  悪態をついても仕方がない。どうやらこれは現実のようだ。 (陽向から不穏な空気を感じる。どうした? 何がいけない? 昨日の子作りの態度が気に入らなかったのだろうか。続けて二回したのがよくなかったのかもしれない。反省しよう) 「違います。二回は関係ありません! あ……」 「二階? 二階がどうかしたのか?」 「いえ……」 (掃除のことだろうか? そういえばルンバがロフトから自害してから二階はあまり掃除してなかったな。トリプレックスのマンションも考えものだ。もっとピヨたん向きの部屋に引っ越そうか。その方がいいな。シルバニアン・ファミリーみたいな可愛い部屋がいいかもしれない。小さな食器に木製の収納家具、バスタブは置き型の脚のついたものがいい。そこに陽向が入ったら可愛いだろうな……ああ、裸の陽向が……ああ……)  情報量! と思わず突っ込みそうになる。こっちの脳の処理速度が追いつかない。  何も知らない周防が冷静な顔で近づいてきた。  凄いな、心の声と顔が全然一致していない。  本物のポーカーフェイスなのだと尊敬する。天才なのかもしれない。 「朝食、食べられそうか?」 「も、もちろんです」 「どうした、大丈夫か?」 「周防さん、ありがとう」  混乱した陽向は周防に向かってニッコリと微笑みかけた。軽く首を傾げてみせる。 (心臓止めるさん☆)  星とか出るんだなと感動する。 「礼はいい。好きでやっていることだ」 「はい」  周防が朝食をダイニングテーブルの上に置いてくれた。オムレツとサラダ、温めたバターロールがのっている。凄く美味しそうだ。 「いただきます」  陽向は朝食を食べながらもう一度、頭の中を整理した。  周防の心の声が聞こえている。  周防はそのことに気づいていない。  そして、自分の心の声は周防に聞こえていないようだ。  ――だったら……。  陽向はこの事態の対策案を思いついた。  本来は聞こえていないはずの声が聞こえている。それなら聞こえないふりをすればいいのだ。  自分が聞こえないふりをすれば万事解決する。  周防だって勝手に心の中を読まれたら嫌だろう。とにかく今日一日、頑張って知らないふりを続けよう。夢の中のもやもや魔人に授けられた能力には絶対に屈さない。  ――俺はやれる。絶対にやれる。  陽向は一人、決意した。

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