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【番外編】スケルトン・ラブ……⑬
――……ん?
視線を感じて目が覚める。瞼を開けると周防の顔が見えた。
とろけそうに甘い目から、長い時間、自分の寝顔を眺めていたのだと分かった。
「おはようございます」
「おはよう」
前髪を下ろしたパジャマ姿の周防が柔らかく微笑んでいる。
陽向がじっと見つめ返すと優しく頭を撫でられた。
――ん?
――あれ、やっぱり聞こえない?
しばらくしても周防の心の声が聞こえなかった。
ほっとするのと同時に、少しだけ寂しくなる。
けれど、これでいいと思った。
――これでいい。
冷静な周防がその仮面の下で、鼻歌を歌ったり、驚いたり喜んだり、独特のレトリックで陽向を愛でたりしていたことは、今回の件で分かった。
周防の愛情の深さや、自分が愛されていることも、全て知った。
もう充分だ。
これからは自分が愛を与えていく。
周防がそうしてくれたように。
「朝ご飯にするか。……ん?」
起き上がろうとした周防のパジャマを引っ張る。あともう少しだけこうしていたかった。
「あと少しだけ」
「ふっ、可愛いな」
「今日は俺が朝食を作ります」
「できるのか?」
「頑張ります」
陽向が勇ましい顔をすると、周防は慈しむように陽向の額へそっと口づけた。
陽向はそのまま目を閉じて微笑み、パンを焼くことから始めようと思った。
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