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すぐ近くの市役所市民課に勤めている。両親も姉も、さらにその旦那も公務員で、定年を迎える両親は熟年離婚を考えているらしい。
そんなどうでもいいことまでぺらぺらとしゃべっていた。
にこにこと聞いていた慎一は、自分も和希と同じ年だと言った。
「同じ、とひ……? そうなんら……」
ため息が出る。
「しんいちは、しぇもらかい し、しゅごくカッコいい……。きっろ、モれるんらろぉなぁ……」
「和希だってモテるだろ? つーか、和希、だいぶ呂律が……」
へらッと笑い、ブルーのカクテルを見ながら「俺は……、らメ……」と呟く。
「らって……」
なんだか泣きたくなった。
「られにも……」
(さわれないんだ……)
「おい! 和希?」
ゴトンと音がして、自分の頭がカウンターに落ちるのがわかった。
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