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【3】-2
このところずっとストレスを抱えていて、精神的に疲れていた。その上、昨日はあんな目にも遭った。
何かを考えることから、少しの間逃げていたくなったのだ。
隣からの体温を感じているうちに、意識は再び深い眠りの中に落ちていった。
「……和希、そろそろ起きないか?」
どのくらい経ったのか、ふいに慎一の声で起こされた。
「……ん」
「おはよう」
「お、おはよう……」
「眠れた? ……って、聞くまでもないか」
慎一は可笑しそうに笑っている。
時計を見ると九時半だ。
「こんな時間まで寝たの、初めて……」
「マジか。俺はこれでも早いほうだ」
ベッドの上に起き上がった慎一を見上げる。
「何時に寝たの?」
「二時半くらいかな」
「二時半……」
草木も眠る丑三つ時ではないか。
「仕事柄、どうしても夜は遅くなるんだ。いつものことだから、気にしないで。今日は休みだし」
「土曜日が休みなの?」
「土日休み。うちの客はサラリーマンが多いから」
店の営業は平日の夕方六時から深夜一時。二時前には完全に店を閉めると慎一は言った。
「だから寝るのはだいたい二時半から三時で、起きるのは十時ごろかな」
「へえ……」
なんだか想像が付かない。それを察したかのように慎一が続けた。
「起きたら掃除と洗濯。必要なものがあれば買い出しに行く。人に会う約束があれば昼間のうちに会って、何も用がなければ適当に休んで、夕方になったらまた店を開ける。わりと規則正しい生活」
確かに規則正しい。九時五時で働く和希とはほとんど真逆だけれど。
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