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【3】-3
慎一が笑い、和希の髪に手を伸ばしてきた。
ビクリと身を竦める。
「あ、怖い?」
ふるっと首を振った。意外なことに全く怖くなかった。
「こぶ、どう?」
「痛い」
慎一は笑って手を引っ込めた。
起き上がろうとすると自然な動作で手を貸してくれる。
一瞬ドキッとしたが、やはり恐怖や嫌悪は感じなかった。
不思議だ。
首をひねっていると、「あのさ」と、やや躊躇いがちに慎一が口を開いた。
「こういうの、やめたほうがいいぞ。……危ないから」
「こういうの?」
「酔って、知らない男のところに泊まるとか……。俺が悪い奴だったらどうするの?」
和希は首を傾げた。
「え、だって……。助けてくれたのは、慎一だよ? それに、僕は男……」
「男だから安全てことは、ないの!」
慎一が眉間にぎゅっと皺を寄せる。
今までも危ない目に遭ったことがあるだろうと、苦い口調で言われたが、和希はきっぱり首を振った。
「ない」
「ないわけないだろ。その見た目で」
「ないよ」
自慢ではないが、危ない目に遭うも何も、それ以前にほとんど人と関わることなく生きてきた。一定の距離より内側に人を寄せ付けたことさえない。
「全然、なかったよ……」
しゅんとうつむけば、「だったら、いいけど」と慎一は視線を逸らした。
「俺、ちょっと理性を試されました」
「へ……?」
間の抜けた顔で見上げると、慎一は「なんでもない」と首を振った。
「だけど、あのくらいの酒で、あんなに酔うとは思わなかった」
「……ごめん」
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