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【4】-1
買い出しがあると言う慎一と一緒に家を出て、公園の植え込みの前まで来ると、当たり前のように慎一は眼鏡を探し始めた。
「このへんだったよな」
「あの、すぐ見つかると思うし、大丈夫だよ。一人で探せる」
朝食までご馳走になってしまった。
「これ以上迷惑は……」
和希が言いかけたところで、「見つけた」慎一がとツツジの植え込みを指さした。
刈り込んだ葉の上に、いかにも無造作に眼鏡とマスクが載っていた。
適当に投げ捨てられて、そのままそこにあったと言う感じで、眼鏡は半分葉の中に埋もれていた。
「人を襲ってお金を奪うなんて、サイテー……」
和希がため息を吐くと、慎一はなぜか下を向いて、「何か、訳ありなのかもな」と呟いた。
「どんな理由があったって、人を襲っていいことにはならないよ」
和希が繰り返すと、慎一は何も言わずに背を向けた。
そうだなと、軽く同意してくれると思っていた和希は、なぜかひどく悲しい気持ちになった。
「最近、嫌なことばっかり……」
言わなくてもいい愚痴が口から零れ落ちる。
「父さんと母さんは離婚するって言うし、家も売るから、どこか探して引っ越せとか言うし……。ちょうどいい機会だから、誰かいい人を見つけて結婚でもすればいいとか……、そんな簡単にできるわけないのに……」
「和希……」
はっとして、口を噤んだ。
「ごめん……」
会ったばかりの慎一に、自分は何を甘えて言いたいことを言っているのだろう。
(こんな面倒くさいこと言う奴は、嫌われる……)
情けない気持ちでうつむいた。その視線の先に、白いものがひょこりと姿を現した。
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