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【4】-4
怯えの奥にかすかな期待と迷いを浮かべて、じっとこちらを見ている。
身体は小さく、産まれてからいくらも経っていないように見えるのに、近くに親がいる気配はなかった。
「捨てられちゃったのかな……」
あんなに小さいのに、これから一人で生きていかなければならないのか。
生きていけるのだろうか。
無意識に手を伸ばしていた。シャアッと毛を逆立てて、猫は再び和希をひっかいた。
「痛……っ!」
傷の増えた手を抱えて、「ごめん」と謝った。
「ごめん。怖かったよね。ごめんね……」
子猫は逃げず、その場に留まっている。和希が手の甲を舐めていると、慎一が隣に来て身をかがめた。
ゆっくりと手を差し出す。
「おいで。ちびちゃん」
「ひっかかれるよ」
「いいよ。……おいで。大丈夫だから」
子猫は唸った。毛が逆立つ。
慎一は辛抱強く「おいで」と繰り返す。子猫の毛が小さく落ち着き始め、警戒が徐々に薄れてゆく。
もう一度、静かに言葉をかけた。
「怖くないよ。おいで」
猫は動かなかった。
けれど、慎一がすっと身を乗り出して小さな身体を掴むと、白い塊は驚くほど素直に手の中に納まった。
「わぁ……」
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