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 怯えの奥にかすかな期待と迷いを浮かべて、じっとこちらを見ている。  身体は小さく、産まれてからいくらも経っていないように見えるのに、近くに親がいる気配はなかった。 「捨てられちゃったのかな……」  あんなに小さいのに、これから一人で生きていかなければならないのか。  生きていけるのだろうか。  無意識に手を伸ばしていた。シャアッと毛を逆立てて、猫は再び和希をひっかいた。 「痛……っ!」  傷の増えた手を抱えて、「ごめん」と謝った。 「ごめん。怖かったよね。ごめんね……」  子猫は逃げず、その場に留まっている。和希が手の甲を舐めていると、慎一が隣に来て身をかがめた。  ゆっくりと手を差し出す。 「おいで。ちびちゃん」 「ひっかかれるよ」 「いいよ。……おいで。大丈夫だから」  子猫は唸った。毛が逆立つ。  慎一は辛抱強く「おいで」と繰り返す。子猫の毛が小さく落ち着き始め、警戒が徐々に薄れてゆく。  もう一度、静かに言葉をかけた。 「怖くないよ。おいで」  猫は動かなかった。  けれど、慎一がすっと身を乗り出して小さな身体を掴むと、白い塊は驚くほど素直に手の中に納まった。 「わぁ……」

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