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【4】-5
「ああー、拾っちゃったよ。うち、食べ物屋なのに……」
「僕が飼う」
「何言ってんだよ。和希は家を出るんだろ? 動物いると、アパート借りるの大変なんだからな」
「う……。そ、そうか……」
けれど、このままここに置いていくのは可哀そうだ。せめて食べるものを運んでやらないと……。
あれこれ考えている和希の横で、慎一が子猫の耳を撫でて言った。
「うちに来たら、外に出せなくなるぞ。それでもいいか?」
子猫は小さく「にゃあ」と鳴いた。かすかに喉まで鳴らしている。困ったような、諦めたような顔で慎一が笑う。
「縁があったな」
「飼うの?」
期待を込めて見上げると「この流れじゃ、飼うしかないだろ」と慎一が苦笑する。
和希の顔に笑みが広がった。
別れ際、「猫、見に来るだろ?」と軽く言われて、何かを考える前に全力で頷いていた。
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