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【5】-1

 誰もいない家に帰り、昼食用に買ったコンビニ弁当を一人で食べた。  家族で一緒に食事をしなくなって、どれくらい経つだろう。  大人になってからは、同じ時間に食卓に着いても、朝はそれぞれ自分でパンを焼いてコーヒーを淹れている。夜は完全に別々だ。   ずっと母親が仕事をしていたので、手をかけられないことには慣れていた。それを不満に思ったことはないし、自分の家が悪い家庭だったとも思っていない。  むしろ、きちんとした家だったと思う。  平和で安定していて、何の問題もない家庭だった。  姉と和希の入学式や卒業式には両親が揃って参列したし、運動会には家族四人で青いビニールシートの上で弁当を食べた。  保護者参観や進路を決めるための面談にも、父か母のどちらかが必ず足を運んでくれた。  二人は特別仲の悪い夫婦ではなかったし、それは今も同じだ。  なのに、別れると言う。  和希には理解できなかった。  姉も和希も、もう小さな子どもではない。それぞれ堅い仕事に就き、四つ上の姉は三年前に結婚して、夏には二人目の子どもが生まれる。  和希はまだ独身だが、家庭を持ってもやっていけるだけの経済力や社会的な基盤は整っている。  見合いでもなんでもして早く身を固めればいいと、気軽に言われた。  二人が別れる理由を聞くと、「強いて言えば、自由になりたいから」と口を揃えて答えていた。  何度考えても、理解できそうになかった。

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