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【6】-1

 週明けの月曜日、役所を出て公園に向かったところで足が止まった。  少し身体がこわばったが、空を見ればまだ陽があり、周囲には犬を連れて散歩をする人の姿もあった。  大丈夫だと自分を励まし、桜の下の遊歩道に足を踏み入れた。  公園を抜けると、すぐに商店街だ。通りを一本入れば慎一の店がある。 いつもと違う角を曲がって、細い裏通りに入っていった。  ビルの前に立ち、入口の横に置かれたプランターを見て胡乱な目になった。  少し早いと思ったが、営業中を示す黒いボードが出ていたので扉を押してみると、カウンターの中で何か作業をしていた慎一が振り向き、にこりと嬉しそうに笑った。 「なんだよ、あれ」  開口一番和希は聞いた。 「あれ?」 「花」 「ああ、あれね。表の花屋がくれたんだよ。茎が伸びすぎて売り物にならないからって」  それが偶然あの花だったと信じろと言うのか。 「偶然? たまたま? 赤いスイートピーが?」 「うん。これも何かの縁かなぁ?」  上機嫌に笑っている慎一を見て、ため息を吐いた。 「猫を見に来たのか?」 「ううん。今日はお客さん。お酒を飲みに来ました」 「ああ、そう。それは、どうも……」  ビミョーな笑顔を見せた慎一に「少しは、飲めるようになりたいんだよ」と言った。わかったと頷いた慎一はまだ警戒しているようだ。 「この前の魔法のお酒、味はおいしかったんだよ」 「じゃあ、リキュール減らして作ろうか?」 「うん。お願い」  あれはチャイナ・ブルーという名のカクテルだが、配合を変えると別物になる。オリジナルだと思って飲んでほしいと言われ、どのみち、あまり詳しくないので別物で構わないと答えた。

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