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【12】-1

 言っている意味が分かるかと聞かれて、慌ててこくこく頷いたが、和希の解釈で本当に合っているのか、だんだん不安になってきた。 (だって、慎一も僕も、男だし……)  何かヘンな勘違いをしたかもしれない。 「こんばんは」  扉を開けると、店には先客がいた。  先週も来ていた女性が、すでにカウンターに座っていて、しきりに慎一に何か話しかけている。  一番奥のいつもの席に向かいながら、和希は横目でその人を観察した。『慎一に惚れたな』という岩田の言葉を思い出しながら。  女性は完璧で念入りな化粧をしていて、爪がきらきら光っていた。バッグや時計は、和希でも知っている高級ブランドの定番品で、まだ四月なのに胸元の開いた白いタンクトップを着ていた。  長い髪をかきあげる仕草が板についている。自分の容姿に自信があるのだろうなと思った。  いつものメニューを手に、慎一が和希の前に来た。 「何にする? サラダはミモザだけど」 「ミモザサラダ、好き。サラダと、あとは……」  和希がまだ注文を終えないうちに、「慎一くん、おかわりちょうだい。次は、マルガリータがいいなぁ」と女性が慎一を呼んだ。  慎一が営業用のスマイルで女性に頷いた。そんなふうに笑うから、相手が期待してしまうのだと、つい胡乱な目になって慎一を睨んだ。 「本日のサラダと、たらこスパゲティにする。……あと、僕もマルガリータ」 「マルガリータはまだ無理」 「じゃあ、マティーニ」  それも無理、と言って、慎一は「いつもと違うのが飲みたいの?」と聞いた。やわらかい営業用のスマイルで。  和希が頷くと、「じゃあ、ほとんど氷とグレープフルーツジュースの第二弾を作ってやるよ」と言って、離れていった。

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