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【12】-2
鍋に湯を沸かし、パスタを放り込んでタイマーをセットする。女性の前でシェイカーに酒を入れ、シャカシャカと振り始めた。
やっぱりかっこいい。
つい見惚れながら、これでは彼女が慎一を好きになっても仕方がないではないかと思った。
カウンターに置かれたミモザサラダとたらこスパゲティを黙々と口に運んでいると、はしゃいだ声が耳に届いた。
「年はいくつ?」
「恋人はいるの?」
「ここはあなたのお店なの?」
休みなく質問は続いた。
「いつからこのお店をやっているの?」
「ご両親や兄弟はどこにいるの?」
和希が迷って聞けなかったことを、彼女はいとも簡単にズバズバと口にしていた。なんだか少し羨ましかった。
慎一は明確な答えは何も口にせず、おだやかに同じ問いを投げ返して、彼女にだけ話をさせていた。目を伏せ、口元には軽く笑みを浮かべて静かに耳を傾けている。
悩みを打ち明ける口調で、先日一緒に来た男性とうまくいっていないのだと彼女は言った。
きらきらする目で、誘うように慎一を見つめながら。
慎一は黙って聞いている。
プロだからだ。それが仕事だからだと思うのだが、なんだかムカムカした。
オレンジ色のタンブラーをぐいっと傾け、半分ほど一気に飲んで、ドン! とカウンターに置いた。自分でもよくわからない、やたらと荒んだ気持ちでそれを睨んでいると、ポンと誰かの手が肩に置かれ、ぞわっと鳥肌が立つのと同時に椅子から飛び上がった。
「何、ビックリしてるんだよ」
岩田がのけぞっていた。
「和ちゃん、よかったら俺たちの席に来るかい?慎一、今日もろくに相手できないだろ?」
チラリと女性を見て、岩田が苦笑する。
「こっちで、一緒に飲んでればいいよ。ほら」
肘を掴まれて、緊張で身体がこわばった。
「岩田さん、あんまり和希にさわらないで」
グラスを取りに来たふりで、慎一が言った。
「なんで?」
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