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【13】-4
犯罪そのものはよくないことだと、今も思っている。けれど、そうしなければならない人がいることも、今の和希には想像することができた。どうすればいいかという答えまではわからなくても、一方的に責める気にはならない。
「僕は、昔の慎一のことは、よく知らない。でも、今の慎一には、たくさん助けてもらってる。こうやって人にさわれるし」
にこりと笑って慎一の手にふれた。その手を慎一の手が包んだ。
「和希……」
和希のほうから慎一の背中に手を回し、少し痩せているけれど、しなやかな筋肉をまとった背中をゆっくりと何度か撫でた。
「慎一は、いい子だよ。僕は、慎一が大好きだ」
いつか慎一が言った言葉を真似て囁くと、ようやく少し慎一が笑った。
「……確かに、照れくさいな」
和希も笑って、言葉を続けた。
「優しくてかっこいい、すごくいい子だよ」
「やめてくれ」
「慎一に、会えてよかった」
ぽんぽんと背中を叩くと、慎一が身体を離した。
「和希……」
慎一の手が和希の眼鏡を外した。少し高い位置から見つめられて、胸が苦しくなる。綺麗な顔がゆっくり近づいてきて、息が止まった。
『もっと、違うところにキスしても、平気?』
ふいに数日前の言葉を思い出し、心臓が飛び出しそうになった。
慌ててぎゅっと目を閉じると、瞼にやわらかいものがふれた。
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