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【14】-2
暖かい夜だった。
みるくを撫でながら、ここ一ヶ月の間に、いろいろあったなぁ…としみじみ思いを巡らせた。
慎一に会って、まだ一ヶ月なのだと思うと、なんだか不思議だった。
ほとんど氷とグレープフルーツジュースでも、アルコールを摂取した身体はふわふわと心地よく弛緩していた。
ベンチの上でみるくを抱いていたら、いつの間にかうとうと寝てしまった。
慎一の声で目を覚ました。
「どこにもいないから来なかったのかと思った」
薄い毛布を二枚持っていて、和希とみるくにそれぞれ掛けてくれる。みるくは毛布から這い出して、上に乗って丸くなった。
くしゅんと、タイミングを計ったように、くしゃみが出た。
「風邪ひいたか?」
「だいじょぶ、と思う。意外と丈夫なんだよ、僕」
そっか、と笑って慎一が隣に腰を下ろした。
時計を見るとまだ十二時前で、「お店は?」と聞くと、常連客が引けたので閉めてきたと言った。
「金曜の夜って、書き入れ時なんじゃないの?」
「たまにはいいだろ」
和希を抱き寄せて髪に小さくキスをした。なんだか幸せな気持ちになって、慎一の肩に頭を預けた。
小さな星がいくつか瞬いていた。
「田舎のほうに行くと、空一面が星なんだってな」
慎一が言った。ぼんやりしたまま和希は答えた。
「林間学校で見たかも……。清里かどこかで」
「へえ。どうだった?」
「うん。すごかった……、たぶん……」
「たぶんて、なんだよ」
慎一が笑う。和希が黙り込むと、肩を抱く力が少し強くなった。
宿泊行事は苦手だった。家を出てから帰るまで、ずっと緊張していたように思う。
「俺は、そういうのには行ったことがない」
慎一が言った。
「俺には親がいなかったからな。家族が一人もいなかった。親戚とも縁が切れてたらしくて、四つの時に施設に入った」
和希が顔を上げようとすると、そのまま聞いてと言うように、ぽんぽんと軽く二回腕を叩かれた。
「高校に入るまで、施設にいた。本当は卒業までいていいんだけど、せっかく入ったのに、高校、すぐ辞めちゃったからな」
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