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【14】-6
半分身体を起こした慎一が、覆いかぶさるように和希の上に乗りあげ、そのままキスを深くした。大きな手が髪や耳たぶを撫でた。
腕を伸ばして慎一の首に回す。身体がぴたりと合わさると、熱く湿ったものが足の間に押し付けられた。
ビクリと身体が強張った。
「し、しん、いち……」
泣きそうになりながら、慎一の胸を両手で押し返した。涙をこらえていると「ごめん」と謝って、慎一は身体を離した。
「嫌だった?やっぱり無理?」
「ち、違う……。嫌なわけじゃ……」
甘くうずくような下肢の変化は不快なものではなかった。けれど、まだ恥ずかしくて、心がついていけない気がするのだ。
「……少しだけ」
「え……?」
顔を覗き込まれ、赤くなって目を逸らす。
「い、嫌なわけじゃない。だから……」
心が追いつくまで、少しだけ待って欲しい。囁くようにそう告げた。
「ごめん、慎一……」
「謝ることなんか、ないだろ」
「でも……」
「待つよ」
どこか嬉しそうな顔をして、慎一が和希の目を見つめた。
「嫌なわけじゃないなら、ちゃんと待つ」
だから、怖がらないでと、おでこにキスを落とす。胸がいっぱいになった。
ほっとする一方で、少しだけ寂しいような気もした。
手を伸ばして抱きつくと、笑ってその手を外された。
「慎一……?」
「我慢してるんだから、誘惑しないで」
結構な苦行なんだぞと顔をしかめた慎一は、ベッドの中でくるりと背を向けてしまった。
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