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第28話 <Hシーン注意>

                   *  姫巫女プラウダの伝えた天使の言葉は、宝が皇太子として彼女たちとともに『泉の湧く神仙の神殿』に向かうことだった。  約束は今日果たした。そのあいだに宝は彼らの世界のいろいろなものを目にすることができた。命も狙われて心底怖い思いだってした。そうして宝はとても愛しいひと、イアンに出会った。  明日が約束の四日目であったが、彼らの神はだれになにを求め、なにを結果として与えようとしているのだろうか。  ジョウアンの国がどうなるのか。国の重用人物である皇太子のギアメンツや姫巫女プラウダが今後も無事にあるのか、そして自分と結城や晶はちゃんとこのもとの世界に戻ってこられるのだろうか。  なにがどう転ぶにしろ、プラウダはそれが必然だという。すべてが正しいと。  その正解のなかには、自分の幸せとよろこびはあるのだろうか。 (イアンと俺のこれからはどうなるの?)  宝はあれだけ乞うていた自分の命にたいして、いまは希薄になっていた。なにしろ無事に生き残れたとしても、確実になにかしらの別れが待っているのだ。  一生だれかと会えないのであれば、宝にとってそれはそのだれかとの死に別れと等しい。  あちらから帰ることができなかったら、家族との別れが。そしてこちらに無事に帰ることができたのならば、イアンとの永遠の別れだ。  この夜宝は明日が知れず、不安でいっぱいだった。  闇雲に手を伸ばして、この手になにが掴めるのかもわからない。ならば今確実に目のまえにある一縷の光にだけは、懸命に縋っていたいではないか。 「イアン。……大好き」  繰り返される触れあわせるだけのキスの合間に、イアンの両の手が宝の服の裾からはいってきた。  借りたTシャツは晶の父親のもので、宝には大きすぎる。だから彼の大きな手のひらでも簡単に忍びこんでこられるし、自由に素肌を(まさぐ)られもする。  彼の匂いと体温、触れてくる手に、宝の緊張からきていたどきどきは、徐々(じょじょ)に性的な興奮のものへとかわっていった。  イアンの息遣いが近い。肌にかかる熱い吐息で、彼が自分に興奮してくれていることが知れた。  大きな手のひらで(あばら)のラインを執拗になぞられるのがとても心地よくて、宝はあえかに息を()く。その瞬間を狙っていたかのように、イアンの舌がぬるっと宝の口のなかに忍びこんできた。 「んふぅっ」  びっくりして声をあげてしまったが、彼はその声すらも飲みこんでしまうような、情熱的なキスをしてくる。  今日、神殿の裏でこっそり彼と交わしたキスが、宝の人生ではじめてのキスだ。口蓋や歯の根などの粘膜を舐められることが、こんなに気持ちいいだなんて、宝はついぞ知らずに生きてきた。  心臓は相変わらず激しく脈打っていたが、反対に肢体はだんだんリラックスしてくる。そして宝の男である部分が、少しづつ反応してきていた。 「ギア……」  自分とは違う名まえを呼ばれても、名まえに意味はないと宝は自分に云い聞かせた。その言葉は彼が自分を欲しているサインなのだと思いこむことで、次第にそれは宝の脳を(おか)す麻薬のような役割を持つようになっていく。  キスのあいまにもイアンの手は細やかな動きで、宝の腹を(くすぐ)る。脇腹を撫であげて、少しづつ上へ上へとあがってきたその指さきに。 (あ、もしかして……)  宝が思った瞬間、彼の親指に片方の乳首を擦られた。 「ぃやんっ」  身体をびくっと跳ねあげた宝に、イアンがクスッと笑う。 「んっ……ん、ん……、ぁんっ……」 「ギア、かわいいな」  いままでそんなところを自分で触ることはなかった。自分がそこがいい、だなんて……、恥ずかしくって仕方ない。そしてそんなことをイアンに教えられたということが面映(おもは)ゆかった。   胸の尖りを押しこむように愛撫されていると、そこから生まれる甘い疼きがあちこち波紋のように広がっていき、身体中をぞくぞくさせる。  抓むようにして転がされると熟し落ちてしまいそうで、怖くなった宝はちいさく「やぁっ」と叫んだ。 「んっ、んっ……」  口から洩れる声で自分が気持ちよがっていることが、彼にばれてしまう。恥ずかしいし、それに宝は男のこんな白声なんて、はしたないくて汚いと思った。  しかしさっきイアンは満足そうに笑ったのだ。それならばと、宝は声を塞ぎたいのを我慢する。すぐに口もとに持っていきたくなる手を、胸もとに留めてシャツをぎゅっと握りしめた。  宝の股間に擦られる彼の男である部分が、自分のとおなじように興奮してきているので、それでなんとか頑張れそうだった。  なにしろこの羞恥を耐えなければ、彼とその先には進むことはできないのだから。  性に(つたな)い自分が彼にしてやれることは、恥ずかしいのも不快なのもすべて我慢することだと宝は思っている。  しかしまだイアンにされることで、不快なことなんてひとつもない。それどころか、彼に与えられるなにもかもが気持ちよすぎて、宝の情欲の印はますます張りつめていった。  くりくりと胸の突起を弄られたびに、それに合わせるようにして宝の性器の先端からは、じわっじわっと先走りが滲みでている。隠しとおせるわけもなく、そのうちイアンにバレてしまうんだと覚悟した。失態だというその瞬間を想像したら身体が燃えそうなほど熱くなる。 「ギア……、ほかにどこを触られたい?」 「あっ、ぁんっ……イアン……、やぁっ、そこ、っそんなに強く触らないで……」 「ん、じゃあ緩めるから、そのかわりこの手、背中にまわして」  抗うつもりはなかったが無意識に彼の動きの邪魔をしていたらしい手を取られ、逞しい背中に誘導された。  ぎゅっと縋りつくと、固く反り返った彼のものが触れ合っていた宝のそれを強く圧迫してきた。ちゃん自分で感じているんだと思うと、もっともっと彼の好きにして欲しいと思えてくる。そのお粗末な胸の飾りだって、触って満足するのなら好きなだけ触ってくれたらいい。  しかしあまりにもそれらの刺激は、宝には強すぎた。 「んっ、んっ、やっ」   宝は誰かと身体を触れ合わすことがはじめてだ。初心者の、童貞なのだ。他人(ひと)と素肌が触れ合うだけでも、勃起してしまうような未熟な身体だ。 「ねぇっ、ねぇっ、イ、イアンっ……もっと、そうっとして、……もっと……ね? つっ! ああんっ」  くにっと両方の乳首を引っ張られた。びくんと胸が大きく跳ねると、イアンが楽しそうに「ふふふ」と笑う。 「イアンッ」 「なんだ? ギア、そうっとしただろう?」 「ちがっ。だめっ、もっと、そっとして、も、あんっ、……つよいぃ」  ますます滲みだした粘液で、下着が濡れそぼっていくのが気持ち悪い。宝はそれをどうイアンに伝えようか迷って、涙目で彼を見上げた。  

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