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第29話 <Hシーン注意>
「イ、イアンッ。あ、あの……」
「どうした?」
彼がかわいくてたまらないといったように自分を見て目を細めるので、また鈴口からとろりと甘い蜜がこぼれてしまう。過敏なった素肌は、もう陰茎を流れていく自分の体液にさえ感じだしている。
「あんっ」
もじもじと揺らめく腰に手をおろしそっとボトムの隙間から差しこむと、意図をくんでくれたイアンが続きを引き受けてくれる。彼は力のある腕で宝の腰を持ちあげると、するっと簡単にボトムを脱がせてくれた。
普段他人 に見せない部分が晒されて、かーっと頭に血がのぼる。しかも宝のそれは元気にぴょんと反り返っているのだ。
(は、恥ずかしい)
きっと耳まで真っ赤になっているだろう。
「イ、イアンも、脱いで」
「ああ。わかった」
お願いした宝の額にひとつキスを落とすと、彼は身体を起こしてさっさと全部脱いでしまった。落とした照明のなかでも、彼の逞しい身体は確認できる。
腕も、腹も、ウエストも。彼の若くしなやかな筋肉はとても美しくて、鍛えてそうなわりはひとつもごつごつなんてしていない。触ると気持ちよさそうだ。宝はコクンと唾を飲みこんだ。
(イアン。全部、かっこいい。ずっと見ていたい――)
彼の股間で反り返る性器も凶悪なほど逞しかったが、それからはさっと目を逸らす。
「俺も上、脱いだほうがいい? その……胸とかない、けど……」
「ギアだって、俺に胸とかついていないけど、いいのか?」
笑われて、それもそうかと宝は上体を起こしてTシャツ裾に手をかけた。しかしイアンに阻止されてしまい、結局Tシャツも彼に脱がされてしまう。
そのまま押し倒されて、ふたりで布団のうえで縺 れあった。
「ああっ、ああっ、イアンっ、イアンっ」
キスを深く重ねながら、イアンが張りつめた宝の性器を、躊躇いもなく手で擦 りあげてくる。腰が溶けてしまいそうな快感のなか、それを与えてくれるのがイアンなんだとしっかりわかっておきたくて、宝は腕を伸ばすと、目のまえにある彼の肌を撫でさすった。
彼の動きに合わせて筋肉が流れるように形が変わるさまを、存分に愉しむ。予想通りすべすべでとても気持ちがよかった。
「んあっ……あっ……あっ」
触っていても触られていても、宝は声がいっぱいでてしまった。だれかにしてもらって迎えるはじめての吐精は、それから間もなくのことだった。
はぁはぁはぁ。
大きく胸を喘がせて、宝は酸素をいっぱいに取りこんだ。イアンに額の汗を指さきでやさしく拭われる。
「気持ちよかった?」
「……うん」
乳首を齧られ、その甘い疼きに身悶えながら宝は出る瞬間まで自分のものをイアンに擦ってもらっていた。かつて味わったことのない絶頂感で精を吐きだした宝は、とろけてしまった肢体をシーツに投げだしたまま、うっとりと目を閉じた。呼吸が落ちつくまでは暫くこうしていたい。
(気持ちよかった。死ぬかと思った)
人生なんども死ぬ死ぬと思うことがあったが、これで死ねるならば最高かもしないと思ってしまう。それほどよかったのだ。極まったときにイアンにぎゅうぅっとしがみつくと、多幸感に包まれた。
(こんなの知ってしまったら、もうひとりでなんてできないかも……)
今度はイアンの番だ。おっかなびっくりしつつ見下ろした彼のソレに手で触れてみた。途端にびくびくびくっとソレが震えたので、びっくりして一度指を引いてしまったがそれでもうれしくて――。
「えっと、このままじゃやりにくいから……」
宝は座ったほうが彼のものを触りやすいと思い、身体を起こすことにした。ところが、イアンの手に肩を押し返されて、ふたたびごろんと布団に寝転ぶことになる。
「イアン?」
なんでだろうと思いながら、宝が仕方なく仰臥位 の体勢のままもういちど彼のものを掴もうとすると、彼が彼のソレに手を当てたのだ。宝はイアンの手に邪魔されてしまうことになった。
「イアン、それじゃ、触れない。俺がす……あっ」
訝 しんでよく見ると、なんと彼は宝が吐きだした体液を、自らの屹立にするっと塗り広げていたのだ。
「って、えっ? えっ? やっ」
そして俄かに宝の脚を開くと、宝の最奥のすぼまりにも、それをついでのように塗りつけた。あらぬところをぬるっとした指先で撫でられて、宝の腰が跳ねあがる。
「ギアメンツ、挿れるよ」
「ひゃっ、――っぅ」
宝の脚が大きく広げられて彼の腰に引き寄せられるや否や、丸みを帯びた先の部分がずるっと挿入された。
「……なっ」
とんでもないところに、とんでもないことをされて、宝は目を瞠って自分の下腹部を凝視する。
体内で感じる熱くて太くて質量感のあるソレに、まるで串刺しにされてしまったような錯覚がした。驚愕に声も出せず握りしめた両手を戦慄く口もとにあてがうだけだ。
(は、はいってる! はいってるぅぅ。そんなことってあるの⁉)
「ぅあんっ!」
さらにぐいっと腰を押し進められ、上体がびくんっと反り返った。
狭い器官を侵され充溢 感に涙が滲む。苦しくてもこんなにも彼を感じられることに、宝の胸に湧き上がってくるよろこびがあった。
のけ反った顎に、啄むようなキスをされる。
「悪い」
「あ……」
「つらいか? はじめてだよな?」
「ん……んっ」
眉根を寄せて訊くイアンに、ぎこちなく頷いた。
すこし痛いが、我慢できないほどではない。それに宝にとっては、痛みなんかよりも彼の性器を自分の体内に挿入されたという驚きのほうが勝っている。
(これって、もしかしてセックス? 俺っていまイアンとセックスできているの?)
てっきり今夜は彼と抱きあって触りあって――。もしかしたらお互いのソレを慰撫しあうことぐらいはあってもいいかな、とは思っていた。所詮男同士なのでそれが関の山だと。
(それなのに、セックス? セックス⁉ やばい……)
宝にとっては思わぬ展開だったが、彼と愛し合うための最上の行為ができるのであれば、それに越したことはない。
(うれしい)
「どんな感じだ? ひどく痛むか? 無理そうなら今日はやめておいて、またゆっくり日をかけて慣らしていけばいいと思うが……」
(だめだ……。だって、きっともう、今夜しかないのだから)
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