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第23話 <Hシーン注意>

 引っ掛れたほうには、ちいさな傷ができるのだ。  恭介が奈緒紀につけられたそのちいさな傷あとは、みるみるうちに綻んでいった。ならいっそ、そこに指をつっこんで押し開いてみようか。  なかから出てきたその胞衣(えな)を、この少年にぶちまけてしまうのもいいかもしれない。そこに生まれたものすべてを、彼に受け止めてもらいたい。 「丈夫そうだし、もうお前でいっか」 「なんか先輩、云ってることチョー失礼じゃない?」  恭介が貸した服は彼にはぶかぶかで、簡単に裾のなかに手を突っこむことができた。  温かい滑らか皮膚を手のひらで撫でさすると、彼の肌は一瞬だけ泡立つように手触りを変えた。でもそれは拒否反応ではない。なぜなら奈緒紀も自分とおなじように、下腹部を昂らせていたからだ。  もっとしっかり密着したくて、奈緒紀の着ていたシャツを胸のうえまでたくしあげた恭介は、彼の胸にぴたっと頬を押しつけた。  頬に感じるすべすべの質感と体温にうっとりとして息を()く。奈緒紀の心臓の音がどきどきと脈打っていることに、こいつも興奮してるのかと恭介は(あざけ)た。 「抵抗しないのか? ちびっ子だって強いんだろ?」 「ちびっ子、云うなっ」 「さすが奈緒紀だな。上等」 「――ふぅっ」  奈緒紀の胸のうえでこっそりと笑うと、吐息が擽ったかったのか、彼が甘い声をあげた。ついでに目のまえのちいさな胸の突起を抓んで、もういちど奈緒紀を喘がしてみる。  そしてその肌の手触りを愉しみながら上体を伸びあがらすと、恭介はふたたび奈緒紀の唇に自分の唇を触れあわせた。  薄暗いなか衣擦れの僅かな音と、ピチャピチャとお互いの唾液の泡たつ水音がする。甘い彼の口のなかを味わう恭介の頬を、潮風がやさしく嬲っていった。 「……んっ……っ……」  奈緒紀の顔を掴んで口づけながら、胸を(まさぐ)っていたほうの手を、彼のベルトのバックルへとずらす。しかし片手ではそれを外すことはできず、恭介はキスを断念して上体を起こすことにした。  逃げられはしないかと焦りながら、戒めるように奈緒紀の顔を()めつけた恭介は、ベルトが外れると、彼の下着とボトムをまとめていっきに膝までずらした。  下肢を晒されても奈緒紀は、じっとしていた。彼はずっと恭介の肩越しにあらぬどこかを見つめているのだ。  それが対岸のイルミネーションなのか月なのか、どこでもない空の一点なのかわからなかったが、そんなことを確かめる余裕なんて恭介にはなかった。  これほどに誰かを前にして衝動に突き動かされることは、はじめてなのだ。  油断してもいいのだろうか。猜疑心(さいぎしん)もあったが欲には勝てず、恭介は彼の顔から視線をはずして、かわりに彼の腹のした、彼の男の印を見下ろした。  ついさっきキスで布越しでもわかるくらいに固くなっていたそれは、いまは柔らかそうな薄毛のしたでくったりとしている。  緊張しているのかそれとも不愉快なのか……。そう思うと加虐心が湧いたが、しかし投げだされた腕のさき、芝を緩く掴むようにしている彼の指が細かく震えていることに気づくと、恭介はたまらずぎっと唇を咬んだ。  口では強気なことを云っていても、奈緒紀だって本当は怖いのだ。それでもやめてやれなかった。  恭介が自分のものよりすこし小ぶりな彼のものを握ると、奈緒紀の身体がびくりと跳ねた。自分がしたことに返ってくる反応であれば、なにだって満足だ。たとえそれが悲鳴でも、暴力でもいいと、本気で思える。  恭介は自分のボトムのまえを寛げると、尻のポケットから邪魔になる財布を取りはずした。ついでに慌ただしい手つきで、財布のなかにひとつだけ入れていた避妊具をとりだす。  そして慣れた手つきで自分のものにそれを装着すると、すぐに片腕でボトムごと奈緒紀の下腿(かたい)をまとめて抱え上げた。    晒した尻からすぼまりを探りあて、自分の猛り立つ反りかえったものを無理やりに押しこむ。 「――ぅくっ」  奈緒紀は押し殺した悲鳴をいちど上げただけだった。  恭介はみっちりと塞がった肉のあいだを、避妊具の僅かな潤滑剤だけを頼りにして無理にぐい、ぐい、と押しこんでいく。荒くたい動きにあわせて、彼の上体が地面を擦りつけるようにして揺れていた。  奈緒紀のなかは快感を得られるどころか、普通なら萎えてしまいそうなほどきつさだ。それでも不思議なもので、自分のするがままに揺さぶられ、自分の与えるすべての感覚を彼が甘受(かんじゅ)しているという事実だけで、恭介は悦楽を感じて、痺れてくる歯を噛みしめた。 「んっ……んんっ……」  どんなにそこが狭くても、陰茎が一向に強度を失わないので、恭介はガンガンに腰を打ちつけて彼を(さいな)むことができる。漏れ聞こえる彼の息を呑みこむ音に、背筋がぞくぞくした。  いつのまにがぎゅっと瞑られていた彼の瞼に、そして額や頬にたくさんのキスをする。ほんとうなら耳に齧りつきたかったが、いかんせん彼の両耳には無数のピアスがついているので諦めるしかない。  

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