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第15話 友達
気分転換にどこか出かけようか、と吉野が言ったのは、朝ご飯を食べてる時だった。食パンとスープを口にしながら吉野は近場の遊ぶところを上げていく。
「どこかいきたいとこある?」
「別にない、というか、バイト一人辞めて忙しくて時間ない」
土日は基本的にバイトだ。一人辞めたのは本当だった。
「じゃあ、放課後デートにしよう。前に会ったコンビニあるでしょ。あのコンビニで待っててよ。外に食べに行こう」
軽口に決まっているデートという言葉に引っかかりを覚えながら、言われるままにコンビニまでいって、待っていた。今度は通報されないようにしたい。こういうとき私服でいけたらいいのに家に入れないものはしょうがない。約束の時間はすぐで吉野もすぐに来るだろうけど、落ち着かなくて、武市は携帯を開く。
「あっ」
いきなり声がした。起動したばかりのゲームから顔を上げると、知らない同世代ぐらいの男がびっくりした顔でこちらをみている。制服姿でおとなしそうで上半身と同じぐらいのおおきなプラスチックケースを持っていた。全く見覚えはない。
「きみさ、吉野先生の知り合い」
男は武市にずんずんと近寄り、話しかける。吉野先生ということは、学校か予備校の生徒だろう。男の剣幕な物言いに嫌な予感がした。
「そうだけど」
「きみが、この前、このコンビニから吉野先生と一緒に帰ってるのを見た。なに? 親戚? 制服ってことは高校生だよね。どういう知り合い?」
男は武市をにらみつけながら矢継ぎ早に疑問を投げかける。
「君もお仲間だよね。でも、吉野先生年上好きだよ。前の彼氏も何個か上だったみたいだからだからムダだから」
男は吉野の答えを聞くつもりはないらしい。なんとも言えず困った。関係といわれても、家が近いだけだ。その事実を目の当たりにされて気分が沈む。
「おい、桂」
知ってる声がした。
「おまえ、何してる」
「吉野先生! なにもー。知り合いっぽい人がいたから、吉野先生のこと知りたいなと思って」
多大なる猫をかぶって桂は返事する。
「だから、そういう意味でお前の事見れないって言ったろ。せめて成人して来い」
「そんなの待ってたら、また次の人を作るんでしょ。おれ、一年から通って先生が間を置かないでとっかえひっかえって知ってるんだから、しばらくあいてつくってないと思ってたら、こんな奴とまちあわせとかヒドイ。年関係ないじん!」
「そいつはちげーわ、近所の仲のいい友達みたいなもんだ。先生と生徒なんて、絶対にない。もう俺にかまうのやめなさい。さっさと帰る」
吉野はきつい口調で桂に行った。吉野がなにを言っても取り合わないと悟ったのか桂は目を赤らめて帰って行った。
「ごめんな。なんかしらないけど、やっきになってんだ」
「とっかえひっかえで、つねに誰かいるって。そんなに節操ないの」
「それは否定しないけど、本当にそこは連と関係ない。いまは作る気ないし、連は全然うちにきていいから」
どうやら、吉野に恋人がいると武市には帰る家がないと困ると思われたらしい。
そうじゃない。あの男は俺に向かって同類だといっていた。嫉妬にまみれた顔、対象外だと何度も言われて傷ついて。泣きそうな顔で帰っていった彼の気持ちが武市はわかってしまった。
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