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39君の鼓動が聞こえる※
聖剣降臨の儀式を終えたイオの体調を気遣い、その日は騎士団の宿舎のヴェルジークの部屋に泊まる事になった。今となってはイオは普通の一般市民なので、気安く城には滞在できないからだ。アーシア陛下が滞在許可を出したが、貴族やヴェルジークに全力で止められた。後者は明らかに私情を挟んでいるが。
そしてハルバースタム団長が大きい声で心ゆくまでヴェルジークの部屋で休むがいいと言ったせいで、騎士団全員がニヤニヤとヴェルジークを見る。イオは特に何をするつもりはなくても、自然と顔が赤くなる。
そこに、フリエスが声をかけてくる。
「よぉ、イオ。大役だったな」
「フリエス、何度も言ってるけどオレだけの力じゃないから大役だなんて・・・」
「まぁ、お前のおかげで一応国は守られてるからそこは自信持っていいんじゃないか?」
「そうかな・・・」
「フンッ、自惚れは身を滅ぼすぞ。せいぜい今はゆっくり休んでおくんだな」
「ガラルイ」
後からやって来たガラルイには厳しい事を言われているが、ツンデレな彼なりの励みの言葉だと今のイオには理解できる。
「なんだよ、ガラルイ。今日は優しいな」
「ッ!」
「ガラルイさんは、ツンデレだからね」
「ツンデレってなんだ?」
「えっと、ツンデレって言うのはね・・・ガラルイさんは好きな人にはつい意地悪な態度をして・・・ムグッ」
「お、ま、え〰️」
「え、なんだよ?ガラルイ、今いいとこなんだから邪魔するなって・・・」
「そうだな、邪魔者はここで永久に沈めておこう」
「ヒッ!!!!!」
「うおっ!?」
「モゴモゴ」
ツンデレ講座をしようとしていたイオの口を塞ぎながら、声の主を振り返るとガラルイは心臓が一瞬止まった。いや、今も止まっているかもしれない。
肩には鬼の形相のヴェルジークの剣が乗せられ、少しでも動けば跳ねられそうだ。何をとは言わないが。
「ガラルイ、その穢らわしい手を離せ」
「・・・・はい」
「ぷはッ・・・ふぅ」
「ブハッ!穢らわしいって、ヴェル、お前最近心狭すぎだぞ」
「なんとでも言え。とにかく、イオの口を塞ぐのは私だけだ」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「イオ、大丈夫か?痛かったり苦しくはないか?」
「うん、ダイジョウブだよ」
イオはヴェルジークの天然な愛情表現に口調がカタコトになっていた。ヴェルジークは部下の痛い視線に構わず、必死にイオの身体を触ったりしている。
そもそも触れていたのは口だけで、決して足までは触られてはいない。
「ヴェル、大丈夫だから。えーと、そうだな・・・もう休みたいかな」
「すまない!イオの疲労に気付けないとは不覚だ」
「・・・イオ、とりあえずまた明日な」
「・・・・口塞いで悪かったな」
「うん・・・。フリエスも、ガラルイさんもありがとう。また明日」
一向に離れる気配のないヴェルジークに抱きつかれたまま、イオが二人に別れを告げた途端にヴェルジークに腰を取られてあっという間に部屋へと連れ込まれた。
そして力強く抱き締められる。
「ヴェル、そんな力いっぱい込めなくても・・・本当に何もないから」
「・・・よかった」
「え?」
「君が無事で本当によかった・・・。以前、君が聖剣の器になると言った時の事を思い出していた。実際に儀式に挑むとなればもし失敗した時は、本当にイオが聖剣の器になるのかとあの場から連れ去りそうになった」
「ヴェル・・・心配かけてごめんね。でもオレはここに居るから」
「イオ・・・・君の鼓動が聞こえる」
「うん」
ヴェルジークを不安にさせないように、イオは彼の手を取り自分の心臓付近に触れさせる。触れた所からヴェルジークへと心臓の音が伝わっているようだった。
「これからは一緒に生きようね」
「ああ・・・もちろんだ、イオ。愛してる」
「うん!オレも・・あ、愛してる」
イオは愛してる、という普段は馴染みのない言葉をヴェルジークへ伝えると抱き着いた。ヴェルジークは少し驚いた顔をしたが、優しく微笑むとそっと抱き締め返した。
そして誓いのキスを交わすのだった。
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月が夜空に浮かぶ頃、イオとヴェルジークは少し狭いベッドの上で抱きしめ合う。イオはすでに触れた箇所がないというほど舌や手でヴェルジークに愛され、息が甘く乱れていた。
「んっ・・・ヴェル、も、いいから・・・」
「ん?まだイオのここは狭いからよく解さないと傷付けてしまうよ」
「大丈夫、早くヴェルのこと感じたい」
「ッ・・・イオ!」
「あッ」
イオの切なげな声に後孔から指を抜くと、片脚を抱えヴェルジークの熱い性器を充てがう。
「イオ、愛してる」
「んっ・・・オレもヴェルのこと愛してる。ああっ!」
そのままゆっくり中へと挿入していくと、ヴェルジークの体躯に見合った大きさの圧迫感からかイオが眉根を寄せて耐える。掴んでいる脚が小刻みに震えていて、まるで達した時のような雰囲気を纏うイオ。
ヴェルジークはイオの頬を撫でて様子を見た。
「っ、イオ・・・大丈夫か?」
「・・・ん、っ・・ぅん・・はぁはぁ」
「もしかして軽くイッたのか?」
「ぁ・・・なんかわからないけど、挿れた瞬間からすごく気持ちよくて・・・」
「ふふ・・・イオ、私を感じてくれて嬉しいよ」
「ヴェル・・・もっと強く抱き締めて欲しい。もうどこにも行かないように、ここにずっと居たい」
「イオ・・・」
「オレは魔王だったり、別の世界のただの人間だったり今も何かとして存在してる。でも、もうここで・・・ヴェルの側で生きていきたい」
「・・・君が望むなら」
「んっ・・・」
人より力の強いヴェルジークは、あまり力を込めないようにイオをさらに抱き締めた。中に冷めない熱を挿入したままだが無理に動かず、そのままでいるとイオの中が誘うように締め付けてくる。
身体を起こし、愛しい人を見下ろすとイオは微笑んでいた。
「ヴェル、ありがとう」
「礼を言うならば俺の方だ。君との出会いに感謝する」
「ふふっ、大袈裟だな。・・・ぁっ、んっ。ヴェル、なんかまた大きくなってきた?」
「っ、・・・すまない」
「・・・・・他の部屋に聞こえないかな」
「イオっ!」
「ああっ!あっ、あ、・・は、んあッ!ヴェルがま、まっ・・てぇ」
「すまない、イオがあまりにも可愛い過ぎて」
「あ、はぁっ、っ・・・んんッ」
可愛い恋人に包まれてはさすがにヴェルジークも我慢の限界だったのか、本格的に動き始めた。イオはここが騎士の宿舎で声を出せば気付かれるとわかっていても、愛する人からの熱に翻弄されれば健気に応えようとした。
シーツを握りしめて耐えようと頑張っていたが、いつの間にか溶けるほどの熱に侵されて自分がどんな声を出しているのかも途中からわからなくなる程に。
だんだん高くなるヴェルジークの熱が身体の奥まで溢れると、イオは幸せに包まれるように眠りに付いた。
翌朝、言うまでもなく顔を合わせたフリエスや騎士達ににやにや顔を向けられてイオは居心地悪そうにしているとヴェルジークが騎士全員朝食抜きの鍛錬に叩き出された。明らかな職権乱用である。
その様子を照れながらパンを噛り眺めていると、イオはある決心を心に秘めるのだった。
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