11 / 31
第10話
モーガンはそれからアルマン家を望遠カメラを構えて見張っていた。
勿論、銃は装備済みだし、受信機は目の前のダッシュボードの上に置いてある。
そして1時間半を過ぎると、モーガンは信じられない光景を目にした。
アルマン家の正面玄関が開き、190以上はある大柄の男にリードがお姫様抱っこされて出て来たのだ。
リードは真っ赤な顔をして、ぐったりとその男に身を任せている。
モーガンは直ぐにでも車を飛び出したかったが、リードは発信機を押していないと思い直し、写真を取る事に専念した。
モーガンが夢中でその光景を写真に収めていると、リードを抱きかかえている男の後ろを歩いていた50代前半の燕尾服を着た男が、その男を抜き去り、門を出て、一直線にモーガンの乗るSUVに向かって足早に近付いて来る。
モーガンは燕尾服の男を連写すると、カメラを助手席に置いた。
燕尾服を着た男が車の窓をコンコンとノックする。
モーガンが窓を下げると、燕尾服の男は恭しく頭を下げた。
「スペンサー・リードさまの同僚の方でいらっしゃいますね。
実はリードさまが酔ってしまわれて、トラヴィスさまがお運び致しました。
助手席にお乗せして宜しいでしょうか?」
モーガンがドアを開け、車から飛び降りる。
「いえ、後部座席に寝かせて行きます」
モーガンがそう言って後部座席のドアを開けると、「ドクター・リード。モーガン捜査官の車に着きましたよ」と別の男の声がした。
モーガンが振り返ると、リードを抱きかかえていたのはトラヴィス・アルマンだった。
モーガンが無言で両手を出す。
トラヴィスがリードを差し出す。
モーガンは無言のままリードを受け取り、後部座席に寝かせる。
そしてドアを閉めると言った。
「リードは何を飲んだんですか?」
トラヴィスが申し訳無さそうに笑う。
「実は姉はワイン類全般が苦手なんです。
社交辞令の為にほんの少し口にすることはありますが。
それでランディの話になったらカクテルを飲みだして」
「カクテル?
どんな?」
「ボイラーメーカーです」
「ボイラーメーカー!?
リードも飲んだんですか!?」
「姉に付き合って下さった。
やさしい方ですね、ドクター・リードは」
「あなた医者でしょう?
リードが酔い潰れるまで放っておいたんですか?」
「すみません。
病院から緩急の電話が入りまして、30分程離席していたんです。
そして戻ったらこの状態でした」
「そうですか。
では失礼します」
モーガンはそれだけ言うと、運転席に乗り込み車を発車させた。
モーガンがロサンゼルス市警察のBAUの本部にリードを抱きかかえて戻ると、本部で待機していたホッチナーとロッシとエミリーとJJがギョッとした顔になる。
ホッチナーを筆頭に全員がモーガンの周りに集まる。
ホッチナーがリードの顔を見ると、モーガンを正面から見据える。
「リードはただ酔っているだけか?」
「ああ、医者のトラヴィスがそう言ってたからな」
「トラヴィスがリードを運んだのか?」
「そう。
執事連れで俺と同じ。
リードをお姫様抱っこして車まで連れて来た」
「リードは何を飲んだ?」
「乾杯はワインかシャンパンだと思う。
だけどシャーロットはワイン類が苦手で、リードはシャーロットに付き合ってボイラーメーカーを飲んだとトラヴィスが言ってた。
ドクター・リードはやさしい方ですね、だとさ。
トラヴィスに病院から緊急連絡が入った30分の間に酔い潰れたらしくて、トラヴィスは気付かなかったらしい」
エミリーが「椅子を並べます。リードを寝かせてやらなきゃ」と言うと、ホッチナーが「いや、このままホテルに連れて帰る。2〜3時間は起きないだろう。リードからアルマン姉弟の話を聞いて、それと被害者の情報を突き合わせ、明日の朝プロファイルを発表する。悪いが今夜0時に俺の部屋に集合してくれ」と言って、あっという間に自分の荷物を持ちリードの鞄を肩から下げてモーガンの腕からリードを自分の腕に移すと、リードを抱きかかえてさっさと本部を出て行った。
ポカンとホッチナーを見送るエミリーとJJ。
モーガンは何か言いたそうだ。
そんな三人にロッシが笑顔で言う。
「俺達もホテルに戻ろう。
少しでも身体を休めないと。
リードの話次第では、寝るのが午前2時過ぎになっちまうぞ」
モーガンが頷く。
「そうですね。
エミリー、JJ、ホテルに戻ろうぜ」
エミリーとJJも「ええ」と答えると帰り支度を始めた。
ホッチナーはリードのホテルの部屋で、リードをベッドに横たえた。
まず靴を脱がし、タイを取ってやり、シャツのボタンを三つ外す。
それからジャケットを脱がし、ベルトを外しスラックスを脱がしてやる。
するとリードが「…くつした…」と小さな声で言った。
ホッチナーが靴下を脱がしてやりながら、「リード、目が覚めたのか?」と訊く。
リードがクスクスと笑う。
「…ほっちぃ…ほっちだぁ…」
「そうだ。
喉乾いてないか?」
「…んー…」
「乾いてるんだな。
ちょっと待ってろ」
ホッチナーが冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出し、グラスに注ぐとストローを刺す。
それからリードの枕元に持って行く。
「リード、水だ。
飲め」
「…んー…きすぅ…」
「何だ?」
「きす…してよ…そしたら…のんでも、いい…」
「…馬鹿だな。
俺にそんなこと言うな」
ホッチナーがストローをリードの唇に当てると、リードはえへへと笑ってストローで水を飲む。
酒のせいで赤くなった唇、上下する桜色の喉。
長い睫毛の奥から覗く、蕩ける様な眼差し。
その全てがホッチナーの目を釘付けにする。
リードがストローから唇を離す。
そしてまた「…きす…」と回らない口調で呟く。
ホッチナーが音も立てずベッドサイドにグラスを置く。
そしてリードの身体に馬乗りになる。
リードは未だ蕩ける様な眼差しで、ただ、ホッチナーを見詰めている。
ホッチナーがリードの頬を両手で包む。
「リード、お前は酔ってる。
水分を取って仮眠を取れ。
アルマン家の話を聞いて今夜中にプロファイルを固める。
分かるか?」
「だからぁ…きすしてくれたら…おみずのむ〜」
「リード!
俺は…お前に触れたら…!」
「…ほっち…ぼくと…きすするのいやなんだ…」
リードの瞳に涙が浮かぶ。
ホッチナーは「馬鹿なのはお前もだ」と言うと、噛み付く様なキスをした。
リードは約束通り、ホッチナーがキスをすれば、水を飲んだ。
一度にたった一口だが。
そして甘ったるい声で「ほっち…ほっちぃ…」と次のキスを強請る。
ホッチナーはその度、啄む様なキスをする。
ホッチナーはグラスが空になったのを確認すると、「さあもう寝ろ」と理性を最大限掻き集めて言った。
するとリードが「眠くなぃ〜シャワー浴びたい〜」と言い出した。
ホッチナーが何とか冷静な声で言う。
「リード、酔ってシャワーを浴びるのは危険だ。
起きたら浴びれば良い。
まだ今夜の集合に時間はたっぷりある」
リードがニパッと笑う。
「ほっちがいれば大丈夫だよぉ〜」
「リード、今朝のことを忘れたのか?
一緒にシャワーを浴びれば、俺はお前に手を出さずにはいられない」
「…ん…いいよ…てゆうかほっちが洗って〜」
ホッチナーが思わず眉間を指先で摘む。
すると涙を含んだリードの甘ったるい声がした。
ただ、一言。
「…おねがい…」と。
それはホッチナーの理性を壊すのに十分な『力』を持っていた。
ホッチナーはリードからシャツと下着を剥ぎ取ると、自分も全裸になった。
そしてリードを抱きかかえると、バスルームに向かった。
リードがフラフラして危ないので、ホッチナーはリードを空のバスタブに座らせた。
お湯を張らなかったのはリードが酔っているので危険があるからだ。
まず自分の髪と身体をざっと洗うと、リードの髪と身体を念入りに洗ってやる。
リードはホッチナーが泡立てたもこもこの泡にご機嫌で、リードの身体を洗うホッチナーを邪魔する事も無かった。
ただホッチナーはリードの足の間は触れられなかった。
触れたらどうなるか分かっていたし、リードは気付いていない様だが、ホッチナーの雄はリードとキスを交わしている間から既に硬く育っていたからだ。
リードがホッチナーから受け取った両手一杯の泡を、殆ど無毛な淡い茂みとピンク色のペニスに無造作に塗りたくり、尻に向かって指を滑らせる。
ホッチナーは目を逸らしていたが、リードは「おしまい〜」と言うと突然立ち上がった。
ツルッと足を滑らせるリード。
ホッチナーが慌てて支える。
「リード!
立つなと言っただろう!?」
リードが「…ふぇっ…こわかった…」と言って泣き出す。
ホッチナーにしがみつく泡だらけのリードを、ホッチナーも強く抱きしめる。
触れ合う頬と頬。
リードが「…ほっちぃ…きす、して…」と呟く。
ホッチナーが「駄目だ」と即答する。
「…なんでぇ〜?…ほっち…ぼくがきらいなの…?」
リードのしくしく泣く声がホッチナーの耳に大きく響く。
ホッチナーが歯を食いしばって、何とか声を絞り出す。
「好きだから出来ない。
酔ってるお前に手を出したく無い」
「…ほっち…いみ…わかんない…きすは…?」
「キスをすればお前の身体に触るんだぞ!?
俺は!
今朝のように」
リードが覚束無い涙声で囁く。
「…ほっちならいいよ…」
「…リード!」
「…だから…きすして…おねがい…」
それは一瞬の出来事だった。
ホッチナーがリードを壁に押し付ける。
そして乱暴に唇を合わせると、離し、「口を開けろ」と鼻先が触れる距離で言う。
リードは嬉しそうに口をほんの少し開ける。
ホッチナーの舌がリードの口内に難なく侵入する。
リードの舌とホッチナーの舌が絡み合う。
リードは自分からは動かないが、ホッチナーのされるがままだ。
ホッチナーが激しいキスをを続けながら、猛った雄をリードの雄に擦り付ける。
リード腰が揺れる。
ホッチナーがリードの雄を掴み、ゆるゆると扱く。
泡のせいでリードの雄はぬるぬると滑る。
リードが「…ん…ふっ…んん…」と甘い吐息を漏らすと、ホッチナーはリードの唇を解放した。
するとリードが蕩けた瞳で、甘ったるい声で、たどたどしく、「…きもち、いい…」と言った。
ホッチナーは『何か』が頭の中で切れた。
そうしてリードの雄が緩く勃つと、自身と同時に扱き出す。
「…ああん…いいっ…ほっちぃ…っ…」
ホッチナーが「しっかり掴まってろ」と言うと、リードはホッチナーの首に腕を回した。
リードは呆気なく濃いピンク色になった雄から白濁を散らした。
力が抜けそうになるリードに、ホッチナーが「しっかり掴まってろと言っただろ」と低い声で告げる。
リードがホッチナーの首に回した手に力を込める。
するとホッチナーの片手がリードの尻を掴んだ。
リードは立っているのが精一杯なのと、放出した余韻に酔っているようで、気にもしていない。
そしてホッチナーの手は一度リードの泡だらけの尻をがっしりと掴むと、素早く手を滑らせ、人差し指をリードの蕾に差し込んだ。
ホッチナーのごつごつとした人差し指は、泡のせいで難なく蕾に侵入する。
「…あんっ…」
リードが仰け反る。
ホッチナーの人差し指はうねうねとリードの蕾の奥へと進んでゆく。
そしてホッチナーはまだ猛っている雄をリードの雄へ擦り付けながら、もう一方の片手でリードの雄をまた扱き出す。
リードが瞳を開けて上目遣いでホッチナーを見る。
「…ほっちぃ…なんか…へん…」
「変だけじゃないだろ?」
「…ん…」
そしてホッチナーの長い指はリードの知らない蕾の中の『感じる場所』をゴリッと擦った。
リードが「アアッ…!」と甲高い声を上げる。
ホッチナーは中を擦り、リード自身を扱く手を緩めない。
リードはギュッと瞳を閉じて、背筋を駆け抜ける電気のような快感に身を委ねている。
ホッチナーが荒い息の中、囁く。
「変だけか?
リード」
「…うぁ…は…あ、ん…」
「正直に言え」
「…きもち…いい…いい…ッ…」
「良し。
良い子だな」
ホッチナーが緩く勃っているリード自身と、はち切れんばかりの自分の雄を同時に扱く。
「出すぞ」
ホッチナーがそう言った時だった。
リードがホッチナーの首を引き寄せるように力を込めた。
それはほんの些細な力だったが、ホッチナーにはその意味が分かった。
ホッチナーがリードの唇に唇を重ねる。
そして二人は同時に爆ぜた。
ともだちにシェアしよう!