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第11話

そうしてリードがホッチナーに腕枕をされてぐっすり眠っている頃、ルームサービスで食事を終わらせシャワーも浴び終えたモーガンとエミリーとJJがモーガンの部屋に集まっていた。 三人は並んでソファに座っている。 目の前のパソコンにはガルシアが映っていた。 「ベイビー、皆揃ったぜ。 俺にしてくれた話をエミリーとJJにも聞かせてやってくれ」 モーガンがそう言うとガルシアが「はいな!」と答えて話し出す。 「今朝、デレクから電話を貰った時に考えたの。 ホッチが管理職という立場で、リードに対して怒ったり厳重注意するのは何だろうって。 でもぜーんぜん分かんなかった! だってリードは何の問題も抱えて無いから! だから考え方を変えてみたの。 リード本人が問題なんじゃなくて、リードに関わる『何か』が問題なんじゃないかって!」 エミリーが「そうか!そういう考え方もあるよね!ガルシア凄い!」と感嘆の声を上げる。 ガルシアが「はいはい賛辞をありがとう、美人なダイハードさん!でも話の腰を折らないで」と言って大きなハートの着いた虹色のボールペンで画面をピッと指す。 エミリーが「ごめん」と口だけ動かす。 「それでね、ここからがあたしの得意分野の登場! パソ子ちゃん達に働いて貰ったの。 まずリードのパソコンのゴミ箱を確認したの!」 「スペンスのパソコンの中身を探ったの!?」とJJが声を上げる。 ガルシアがまたハートのボールペンで画面をピッと指す。 「話の腰を折らないでって言ったばかりだよ〜有能過ぎる美人さん! それと見たのはゴミ箱だけ!」 JJも慌てて「ごめん」と口だけ動かす。 ガルシアがわざとらしくゴホンと咳払いをして、話を再開する。 「皆も知ってると思うけど、リードはしょっちゅう色んな一流大学やシンクタンクや企業からリクルート…つまり引き抜きにあってる。 でもリードはそんなメールが着ても即ゴミ箱行きにしてた。 例えハーバード大学からでもね。 ところが流石はハーバード大学! しつこい、しつこい! 3ヶ月に一度はリードを誘ってた。 そして五日前とうとう正式な文書を作成して郵便で送付して来たの。 これはFBI本部に届く郵便記録でリード宛のを探したら、簡単に出て来ました〜! FBIに届く郵送物は全てスキャンされて危険物では無いか確認されるからね。 それと同時に文書送付のお知らせメールも送って着ていた。 さてここで美人二人に問題です。 皆さんも含めてリードのパソコンの中身を見られる立場にいる人は誰でしょう?」 エミリーとJJが同時に「ホッチ!」と答える。 ガルシアが「大正解〜!」と言って、にっこり笑うとまた話し出す。 「でもそのメールはゴミ箱に入ってた。 だけどあたしはそこで諦めるようなベイビーじゃ無いのよ〜。 デレクから電話を貰ってここまで調べてから、BAUのオフィスに行ってリードのデスクを確認したの! そしたらハーバード大学から来た文書が、仕事上どうしても持っておかなきゃならないファイルに紛れて無造作に置いてありました〜! リードが休憩中に読む本の方が何十倍も大切に置かれてたよ! そこでパソ子ちゃんでリードのパソコンの中身を見てみたら、ハーバード大学から郵送で届いた文書と同じだっていうメール発見! それを見てみたら…これが大変! 好条件の嵐! ハーバード大学に行けばリードは即教授のポストに着けるし、なんとリードが専攻する分野もリードが自由に選べるし、なんなら掛け持ちもOK! それになんと教授になると同時にリードの為だけの研究室も用意される。 講義だって最低限行えば、研究を優先していいときた! そして三日前にまたハーバード大学からメールが着てるの! これはご機嫌伺いみたいなもん。 先日の文書かメールはご覧いただけましたか〜?お返事はいつでも結構です〜お待ちしています〜的な。 さて三日前と言えば? そう! リードが朝イチに、ホッチに『何か』を話された日の前日! ブラインドを全部下げてまで話した日ですよ〜。 そしてリードはその後、ドキドキが止まらないと言い出した。 つまりね、原因はリードがハーバード大学からのお誘い文書と同じ内容のメールと、ご機嫌伺いメールの二通を、ゴミ箱に移し忘れていて、リードのメールをチェックしていたホッチは、リードの心がハーバード大学に傾いてるんじゃないかと誤解した。 ところがリードはハーバード大学に行く気なんて全然無いから、ホッチに確認されて驚いた。 誤解されてることもショックだったかも! だってリードはBAUで頑張ってるもん! リードは天才だけど繊細だし、ショックでドキドキするのも分かるよ! ところがここから雲行きがもっと怪しくなるの。 ロッシが登場しちゃうんだよね〜」 エミリーとJJが同時に「ロッシ!?何で!?」と声を上げる。 ガルシアが重々しく言う。 「考えてもみて? リードはギデオンの秘蔵っ子だった。 だけどそれはホッチも同じ。 ホッチにとってもリードは秘蔵っ子でかわいくて仕方無いんだよ。 あたしにはミエミエ! そんなホッチがあのハーバード大学からのメールを見て、それがゴミ箱に移されていなくて、動揺しないと思う? それにあたしと同じ様に、リードのデスクだってチェックして文書が破棄されていないのも確認してる筈。 だからリードにハーバード大学に行く気か確認した。 でもリードは全然考えもしていなかった事をホッチから指摘されて、誤解されていると知って、ショックで上手に完全否定出来なかったんじゃないかな? そこでホッチは古い付き合いでファーストネームで呼び合う仲のロッシに相談した。 そこでロッシは一計を案じた。 あたし達がリードがホッチに怒られたと勘違いして、リードを励まそうとしてリードを夕食に誘ってた時、ロッシが国家安全保障局からの500ページもあるラテン語の暗号解読をリードに頼んで来て、夕食がお流れになったでしょ? と・こ・ろ・が! ロッシのパソコンにはそんな記録は何処にも無いの! だけど今時、500ページもある書類を紙で渡すと思う? 絶対暗号化してデータで渡すでしょ? ところが我らが天才リードくんは紙でないと嫌がる。 だからロッシがリードに『本当に』ラテン語で書かれた500ページもある暗号を解析させたかったら、必ず事前にプリンターで印刷してる! しかもそんなに大切な書類をBAUの外には持ち出さない筈。 それにプリンターで印刷されれば自動的にプリンターのカウンターに記録が残る ところが十日前まで遡ったけど、BAUで500ページもの印刷をされたプリンターの記録は無かった。 分散して印刷されたとしても、ロッシが度々プリンターの前にいたら不自然だし目立っちゃう。 でもロッシのオフィスのプリンターにも記録は残って無いの。 つまりあれはリードと二人切りで膝突き合わせて話し合う為の作戦! だけどこれがまた裏目に出た。 ロッシにまた確認されて、リードはホッチがそんなに自分を疑っているのかとショックを受けた。 だからロッシにもホッチと同じ返事しかしなかった。 それをロッシから聞かされたホッチは、翌日の朝、つまり昨日の朝、仕事で飛ぶ前にリードにもう一度確認せずにはいられなかった。 それでリードはロッシにも質問をされて、まーたホッチにも同じ質問をされてキレた! それで泣いちゃったんじゃない!? デレクとエミリーが見たのは、ホッチが怒って泣いてたリードじゃ無くて、ホッチに対してショックで泣いてたリードだったんだよ! だからホッチはやり方を変えた。 リードを問いただすよりも、BAUの仕事のやり甲斐や意義を再確認してもらう事にした。 それでリードを叩き直している様に皆には見えたんじゃないかな? あと今朝リードがホッチに対して怒ってたのは、たぶん昨夜ホッチがBAUのラップトップでリードのパソコンをチェックして、まーだお誘い文書とご機嫌伺いメールが残されているのを知って、今朝またハーバード大学の話を持ち出したんじゃないかな? リードが昨夜のことは気にしてないって言うのは、昨夜はホッチが仕事の件を聞くに留まったから。 っていうのがあたしの推理と事実! 以上!」 エミリーとJJがパチパチと拍手をして、「ガルシア、凄〜い!」と画面に向かって身を乗り出す。 ガルシアが満面の笑みを浮かべて「ご清聴どうも」と言うと、モーガンが苦笑した。 「お人形ちゃん。 あんまり良い気になるなよ。 結局色んなパソコンの中身や記録まで見てんじゃねぇか。 それより『あの』ホッチがそこまで動揺するとはな…。 どうやってホッチにリードを信じさせるか…」 モーガンとエミリーとJJが顔を見合わせると、パソコン画面のガルシアが言った。 「あたしのチョコムース! あたしは良い気になって無いし、まだホッチを納得させちゃう作戦は話して無いんだけど聞く気ある?」 モーガンがフフッと笑う。 「おう、頼む」 「あのねー名付けて毒をもって毒を制す作戦! ホッチがロッシに頼んだのなら、あたし達もロッシに頼むの! まずロッシにホッチは誤解してるって理解して貰って、あたし達の味方になって貰う! それでロッシを筆頭に、あたし達が勢揃いしてホッチにリードの気持ちを説明して誤解を解く! あ、リードは外さなきゃ駄目だよ? ハーバード大学の件は相当ナーバスになってるだろうし、ホッチの反応次第ではリードは今度こそ傷ついちゃうかもしれない。 あたし達だけで解決しよう!」 「ベイビー、お前はやっぱり最高の女だぜ。 失言して悪かった。 そうだな。 それで行こう。 エミリーとJJはどうだ?」 エミリーが「最高の作戦だよ。今回の事件が解決したら早速動こう!」と言えば、JJも「ロッシの誤解が解ければホッチの誤解も解ける!良いと思うな」と笑顔になる。 モーガンがパソコンの画面のガルシアと、エミリーとJJを見渡して言う。 「今夜プロファイルをしっかり固めて明日警察に発表すれば捜査も前進する。 午前0時まであと2時間あるから休もうぜ」 まずガルシアが「じゃ後で!」と言ってパソコンから消えると、エミリーとJJもモーガンの部屋を後にした。

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