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第75話 *R18(ちょっとだけ)
「葉琉、この後ちょっと付き合ってくないか?」
「今日は特に外出のご予定はなかったかと思いますが、急用ですか?」
「...いや、祖父がこっちに来ていてな」
「......お断りしても?」
断れないと分かっていながら苦い表情をする葉琉。社長室のデスクで紫桜もディスプレイから目を離すことなく苦笑する。
葉琉が一人アフタヌーンティーを楽しんでいたのが先週の話。最近は特に忙しいということもなく、紫桜は2人の愛の巣ともいえるマンションで葉琉と新婚ホヤホヤな生活を送っていた。そのお陰なのか、月曜だった昨日の紫桜の機嫌は異様なほど良かった。他の役員や社員たちがいつもとは逆の意味で恐怖したほどに。(いつもは不機嫌で怯えられる社長)
「いきなり松涛の別邸に来たかと思えば、”恋人と一緒に顔を見せろ”と一方的に電話してきてな」
ため息を吐きつつも書類に目を通しながら所々サインしていく紫桜。葉琉は紫桜へのアポを取りたがる連中(他社の重役や営業)からのメールを捌きながら優先順位をつけていく。
「...ちなみにいつですか?」
「......」
「その沈黙、かなり怖いんですが」
一瞬視線を社長に向けた葉琉。一見いつもと変わらないような社長だが、私生活を共にしてわかってきたが”気まずくなると一瞬視線が泳ぐ”のだ。もちろん一瞬の出来事なのでわかる人はほぼいないだろうが、こと葉琉に関することはすぐに視線が泳ぐ。
そして葉琉が視線を向けると分かったのか、一瞬視線を向けるもすぐに反らした。
...絶対何かある。
「で、いつなんです?さっさと吐いてください」
もはや”社長”ではなく恋人に冷たく当たる”彼女”のようなポジションに収まる葉琉。
何気なく怒っている葉琉が結構好きな紫桜は内心押し倒したくて堪らなかった。
「その、今夜、だ」
「.........は?」
言葉を詰まらせながらいう紫桜。そしてまさかのあと数時間後の出来事だとは思わなかった葉琉は口が悪くなっている。
「まぁ、そういうことで」
「...そういうことで、じゃないでしょう。は?今夜?いつもよりは仕事も少ないとはいえ、連日22時に帰宅してるんですよ?いくら松涛まで15分くらいで行けるとはいえ、さすがに失礼でしょう。バカですか」
「......」
ボロクソに言われるもなにも言い返せない紫桜は黙り込む。
「それで?会長のことです。顔を出せと言ったのは昨日の今日でもないんでしょう?」
「......先週の水曜です」
「...バカに失礼でしたね。ドアホでした」
これが普段は言い返す紫桜がなにも言い返せなかった理由である。先週であればまだ仕事の調整ができ、今日くらいは定時に上がって松涛へ顔を見せることもできたはずだった。しかし、紫桜は葉琉との幸せな時間を誰にも邪魔をされたくないと思い、今日の今日まで黙っていたのだ。
「ちなにみ、何で今さら教えてくれたんです?」
「...会長秘書が直接葉琉に連絡すると言ったからだ」
子供ですか。
思わず口から出そうになったが、そこは思い止まった。椅子に座っている今にも泣きそうな子犬を見てしまうと、自分がいじめているようでなんとなく後味が悪かったからだ。
「さっさと終わらせてください。会長にはMr.ウェストンには私から連絡を入れておきます」
そういいながら仕事用にスマホをタップする。
「お久しぶりです。紫桜社長秘書の神代です。ただいまお時間よろしいでしょうか?Mr.ウェストン」
笑顔で通話する葉琉。その間も仕事を捌く手は止めない。
「はい。それでよろしくお願いします。では、失礼致します」
「どうだった」
「今夜21時に松涛の別邸でとのことです。というわけで、さっさと終わらせてください」
葉琉のところに紛れていた決済書類を紫桜のデスクへ持っていくついでに社長室に併設されている小さな電気ポットのお湯を新しく茶葉を入れ換えたティーポットに注いでいく。
「さすがにコーヒーは飲み過ぎです。紅茶で気分転換してください」
午前に5つの会議に参加し昼食時もワンチャンスを狙ってアポなしで押し掛けて来た社員と軽くディスカッションし、午後は午前中に全く手をつけられなかった書類を捌きながら唐突に相談しに来る藤堂副社長やウォーレン代表の相手をしていたのだ。その間ずっとブラックコーヒーばかりで既に8杯完飲している。
さすがにカフェイン取り過ぎでしょ。
恋人兼秘書の優しさに思わず抱き締めようと両腕を伸ばし絶対に拒否されると分かっていながらも軽くキスに留めた。これから数時間馬車馬のように働かなければ21時までには絶対に終わらない仕事量をこなすのだ。これくらいはいいだろうと心の中でため息を吐きつつも素直にキスを受け入れた葉琉。
「っ、...ちょ、、ぅん」
「煽った葉琉が悪いと思うが?」
拒否されると思っていたキスをまさか受け入れられるとは思わなかった紫桜はそのまな暴走する。逃げ腰になった葉琉の腰を抱き、押し返してくる葉琉を押さえ込むように愛しいと言わんばかりの視線とGlareを向ける。
「...んぁ、ん...。」
葉琉の甘い吐息が二人の隙間から漏れ出る。
グッと押し付ける紫桜の中心は固く滾り、葉琉は無意識のうちに自分の菊門が濡れて来ているのを察し、さらに濡れる。それと同時に葉琉の中心も徐々に起き上がっているのを自分のムスコで感じた紫桜は右手を葉琉のスラックスに忍ばせた。
「ちょ、...!」
社長室というある意味公 の場ともいえる場所でナニをしようというのか。焦る葉琉だが既に葉琉に溺れて状況が見えていない紫桜の暴走は続く。
「しゃ、ちょう...!...ん、んぁん...。し、おぅ!」
「...ん?どうした?」
頑張って言葉を紡ごうともがく葉琉。紫桜の右手は止まることなく葉琉の中心に到達する。片手でゆっくりと握られ、親指で先端をスリスリされると腰が反ってしまう。
「あ、とで!...っぁ。ベッド、で、、いっぱい...っ、して...?」
思いがけない葉琉の甘い言葉に紫桜の思考は一気に止める。
いつもツンデレのツンしか出してくれない葉琉。思考を完全にGlareで溶かさなければデレの部分を出してくれないのに、今自分の腕の中で多少蕩けているもののまだ理性を保った葉琉がまさかの自分から夜のお誘いをしてくれるとは。
紫桜は目を見開き、少し葉琉を見つめていたかと思うとニンマリと”悪者”の笑みを浮かべまた葉琉にキスを落とす。
「松涛に行くのは止めにするか」
「...っ、何いってるんですか。行かないっていうなら夜もなしです」
「わかった。さっさと終わらせてすぐにマンションへ帰ろう」
そして葉琉を隅々まで味わわせてくれ。
軽くバードキスを葉琉の顔に降らせながら危険な色香を纏う紫桜。落ち着いたGlareに安心しつつ、力が入らなくなった両足を無理矢理立たせスーツを軽く直す。
...いつかここで最後までヤりそう。
「ここでヤるのも遠い未来ではないかもな」
「...思考を読まないでください」
甘い葉琉の思考はエロに全振りした紫桜の思考と同じだったらしい。
紫桜のGlareが充満した社長室。無言で窓を全開にしお気に入りの消臭スプレーを部屋中に撒き、葉琉は仕事を再開した。そのあと終わるまで事あるごとに紫桜の熱い視線を感じ自分の菊門が濡れて暴かれたいと、犯されたいと思いつつも我慢したのは内緒である。(多分...)
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