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第一章・2

 母子三人で、身を寄せ合うようにして暮らしていたが、その母が病で急死した。 「母さん、母さん……」  涙をぽろぽろこぼす惠の背中を、瑛一は優しく撫でさすった。  これからは、俺が一人でこいつを守るんだ。  そんな決意を胸に、母を見送った。  はずだった。  だがしかし。  母の葬儀もそこそこに、さる富豪の顧問弁護士と名乗る男が二人の前に現れたのだ。 「俺たちの父親が、藤堂(とうどう)財団のトップ!?」 「お二人は、藤堂家の一員として迎えられます」  瑛一は、そんな御大層な身分など御免だった。  大学は辞めて、弟のために働こうと考えていたのだ。 「お断りだ。今まで母さんを、惠を放っておいて、いまさら何だ!」 「藤堂さまは、これまであなた方の養育費はきちんと払っておいででした」  だから、進学もかなったのですよ?  そう言われては、口をつぐんだ瑛一だ。  確かに母の稼ぎだけで二人とも進学だなんて、どだい無理な話だ。 「お母様の治療費も、藤堂さまが用立てておいででした。藤堂さまは、ずっとあなた方のお母様を愛していらしたのです」 「その母さんは、もういない。俺は俺の好きにさせてもらう」  頑固な瑛一に弁護士が困った時、今まで黙っていた惠が口を開いた。

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