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第一章・3

「僕は、藤堂の家に入りたいと思います」  弟なりに、兄を犠牲にしたくないという気持ちが惠にはあった。 「兄さん、僕と一緒に父さんのお世話になろうよ。大学、辞めないで」  惠の必死の願いに、ようやく瑛一も承諾し、兄弟は身の回りの物をまとめて家を出た。  藤堂家が用意した車に乗り、住み慣れた我が家を後にした。 「何だか、寂しいね」 「そうだな」  そんな惠も、これから自分らの家となる屋敷を見た時には胸が躍った。  広い庭園、時代がかった重厚な洋館、何台もの高級車。 「ここが、僕たちの家になるんだね。兄さん」 「ふん。俺はこんな御大層な邸宅には住みたくない」  父は笑顔で二人を屋敷に迎え入れたが、瑛一はにこりともしなかった。  そんな瑛一の態度に、惠はあの言葉を思い出していた。

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