18 / 163
第一章・18
(意識してるの、僕だけ!?)
それはもう、腹が立つのなんのって、もう!
「あ、兄さん危ない」
「は?」
次の瞬間には、ミルクピッチャーが倒れて瑛一の服に染みを作っていた。
「あ~あ~あ~」
「もっと慌ててください、瑛一様! ナプキンを!」
使用人たちが騒ぐ中、惠はしてやったりと胸の中で笑っていた。
すると、その時。
「わざとでございますね? なぜですか?」
小声で執事が耳打ちしてきた。
ヒヤリとしたが、そこは何とかごまかした。
「だって、いっつも姿をくらましてるのに、突然やってきて朝ごはん食べてるなんて。何だかずるいよ」
「惠様らしい言い分ですね」
瑛一が不在の時、一番気をもんでいるのは惠だ。
人の心配も知らないで、マイペースを崩さない兄に腹が立ったのだろう。
執事はそう判断してニコリと笑い、惠に一礼した。
彼が様子を見に行く頃には、すっかり零したミルクの始末はついていた。
ともだちにシェアしよう!