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第一章・18

(意識してるの、僕だけ!?)  それはもう、腹が立つのなんのって、もう! 「あ、兄さん危ない」 「は?」  次の瞬間には、ミルクピッチャーが倒れて瑛一の服に染みを作っていた。 「あ~あ~あ~」 「もっと慌ててください、瑛一様! ナプキンを!」  使用人たちが騒ぐ中、惠はしてやったりと胸の中で笑っていた。  すると、その時。 「わざとでございますね? なぜですか?」  小声で執事が耳打ちしてきた。  ヒヤリとしたが、そこは何とかごまかした。 「だって、いっつも姿をくらましてるのに、突然やってきて朝ごはん食べてるなんて。何だかずるいよ」 「惠様らしい言い分ですね」  瑛一が不在の時、一番気をもんでいるのは惠だ。  人の心配も知らないで、マイペースを崩さない兄に腹が立ったのだろう。  執事はそう判断してニコリと笑い、惠に一礼した。  彼が様子を見に行く頃には、すっかり零したミルクの始末はついていた。

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