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第一章・19

「兄さん、どうしてるかな。もう、外へ出ちゃったかな」  そう呟いてから、惠は眉根を寄せて頭を抱えた。  居ても居なくても、瑛一のことを考えてしまう。  兄さんの事で、いつも頭がいっぱい。  頭いっぱいの兄さんが、心にまで忍び込んできたのはいつからだろう。  自室へ戻り、ベッドに腰掛け膝を抱いて丸くなっていた。  ぎっこんばったんと体を揺らしていると、ドアの方から声がした。 「惠、入るぞ」 「兄さん」  返事も待たずに、瑛一はずかずか部屋に入ってくる。  ああ、どうして『兄』という人種は、こうもデリカシーがないのだろう!  この部屋に二人になると、昨夜のキスの事を嫌でも思い出した。  悟られないよう、惠は一生懸命に何気ない口調で瑛一に話しかけた。 「何? 兄さん。僕に用かな」 「ああ。こいつを洗濯しといてくれ」  がっくりと惠は肩を落とした。  先程、惠がミルクで汚した瑛一のボトム。  あれが目の前に付き出されている。 「兄さん……」 「なんだ」 「ううん、何でもないよ……」

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