24 / 163
第二章・2
ライン。
兄さんが、あの兄さんが、ライン!
惠は、椅子から転げ落ちそうになった。
「だ、誰と!?」
「女」
そこでもう一度、惠は口をぽかあんと開けた。
この僕ともラインなんてやってないのに、女の人と!
「……こないだ、別れたって言ってなかったっけ?」
「新しい女だ」
惠は3度も口を開けてしまったので、しまいには鯉のような大口になってしまった。
さすがに弟のリアクションに気づいた瑛一は、ようやくスマホから顔を上げ惠の方を見た。
「女を馬鹿にするな。いざという時には最後のシノギになるんだ。最低、食って寝るだけのことはできる」
なるほど、兄らしい女性観ではあるだろうが、惠にはそれが気に入らなかった。
女性=シノギだなんて、まるで便利な道具程度にしか思っていないのではないか。
「兄さん、その人の事、ホントに好きなの?」
「ああ」
イエス、という返事の割には、また無表情にスマホを眺める瑛一だ。
好きなら、もっと笑顔になるはずなのに。
ともだちにシェアしよう!