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第二章・3

「兄さん、僕ともラインしようよ」  もう一度顔を上げた瑛一は、今までで一番表情というものがあった。 「お前と?」 「そう、僕と」  だって兄さん、いっつもいなくなるし、どこで何やってるか解からなくなるし、連絡方法も知らないし。  新しい携帯の電話番号さえ、惠に教えてはいないのだ。瑛一は。 「よせ」 「なぜ!?」 「面倒だ」 「女の人とはラインするのに?」  これは義務みたいなもんだ、と割り切る瑛一が、惠にはますます歯がゆくて。 「じゃあ兄さん、僕をシノギに使ってよ!」 「は?」 「好きでもない女の人を繋ぎとめるためにラインするより、弟の僕の部屋に転がり込んだ方が面倒なくていいんじゃない?」 「……」 「食べて寝るだけなら、ここでもできるでしょう!?」

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