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第二章・4

 黙ってしまった瑛一だが、惠はそこまで一息に言ってしまうとスッキリした。  馬鹿な兄さん。  ひどい兄さん。  血の通った肉親がいるのに、わざわざ気を遣う他人の元に行くことないじゃない。  しかし瑛一の返事は、突拍子もないものだった。 「お前、妬いてるのか?」 「えっ」 「俺が女とラインして一緒に暮らすのが、そんなに悔しいか」  まいったな、と瑛一は笑っていた。  4つ年下の弟・惠。  藤堂の家に厄介になっていながら、その部屋を俺に提供するなどと面白い事を言う。  こないだは、キスがどうとか色気のあることをさえずっていたが、今度は同棲か。 「この屋敷には、俺の部屋も用意してある。そこを使えとは言わないのか」 「あ……」  そうだった、と惠は再びぽかんと口を開けた。  瑛一は嫌がってあまり使うことは無いが、確かにここには兄の部屋がちゃんとある。  どうして僕は、ここに来い、なんて言っちゃったんだろう。 「妬きもちは嬉しいが、何も食って寝るだけのために女の所へ行くわけじゃないぞ、俺は」  そこで瑛一はわざとらしく小指にキスをして見せた。  その仕草が何を表すかをすぐに悟った惠は、真っ赤になってしまった。 「こればかりは、お前ではどうにもならないからな。諦めろ」

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