32 / 163

第二章・10

 瑛一が惠の部屋へ出入りするようになってから、しばらく時が過ぎていた。  頻繁に来てくれる、との惠の期待は裏切られ、長い時は20日も顔を見ないこともあった。  しかし寒さが厳しくなったせいか、このところ兄の顔をよく拝む。  時には一緒にベッドへ入って休む事もあり、惠は嬉しかった。  ただ、そんな時には『あのやり取り』を思い出して、少々身を固くしてしまうのだが。 『僕だって、エッチくらいできるよ。キスだって、ほら。ちゃんとできたでしょう?』 『お前が、俺に抱かれてもいい、って言うのか?』 『そう』

ともだちにシェアしよう!