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第二章・10
瑛一が惠の部屋へ出入りするようになってから、しばらく時が過ぎていた。
頻繁に来てくれる、との惠の期待は裏切られ、長い時は20日も顔を見ないこともあった。
しかし寒さが厳しくなったせいか、このところ兄の顔をよく拝む。
時には一緒にベッドへ入って休む事もあり、惠は嬉しかった。
ただ、そんな時には『あのやり取り』を思い出して、少々身を固くしてしまうのだが。
『僕だって、エッチくらいできるよ。キスだって、ほら。ちゃんとできたでしょう?』
『お前が、俺に抱かれてもいい、って言うのか?』
『そう』
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