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第二章・12
「ほら、土産だ」
10月31日。
オレンジの包装紙の、四角い箱。
惠は、わくわくと包みを開けた。
しかし、中から出てきたのは、丸い饅頭だった。
「なんだ、お菓子かと思ったのに」
「饅頭も菓子だろう?」
「今日はハロウィンだよ。 普通、洋菓子がお土産じゃない?」
「すまないな、普通じゃなくて」
そんなとぼけた会話とともに、瑛一が部屋に入って来た。
コートから冷気が漂ってくる。
外は寒かったんだろうな、と惠はエアコンの設定温度を上げた。
時刻はもう遅い。瑛一は今夜も泊まって行くだろう。
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