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第二章・14

 ベッドが軋み、惠が動くたびに瑛一の体が揺れる。  息を弾ませ汗ばむほどになった頃、ようやく瑛一が声を掛けた。 「もういい。ありがとう」 「どういたしまして」  しかし妙な事に、そのまま寝てしまうと思っていた兄は起き上がり、さらには惠の部屋から出て行くのだ。 「兄さん、どこ行くの?」 「すぐ戻る」  ドアが閉まり、取り残された惠は不安だった。  もし、このまま兄さんが帰って来なかったらどうしよう。  いや、それどころか、もう二度とここに来なかったら……。  惠の恐れは杞憂で、ものの10分も経たぬうちに瑛一は帰ってきた。  ただ、その体には冷気を纏ってはおらず、外へ出た訳ではないらしい。  そして手には、何か持っていた。 「惠、紙はないか」 「兄さん……、その手に持ってるの、何……?」 「スキン」  瑛一は、なぜか使用済みのスキンを手にしていたのだ! 「ヤだッ! ちょ、なんで?」  瑛一が手にしている以上、それは明らかに兄のものだ。  中には兄の体液が入っているのだ。  口を縛って中が零れないようにしてあるスキンが、やけに生々しい。

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