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第二章・15

「ぎゃあぎゃあ煩いな。このまま捨てるぞ、いいのか?」  ベッドの側に置いてある屑籠へ、瑛一がむき出しのままゴムを捨てるふりをした。 「やめてよ、兄さん! はい、ティッシュ!」 「うん」  瑛一は無造作に紙を数枚手にすると、スキンごと丸めて屑籠へ捨てた。  これで一見、こんなモノが捨てられているようには見えない。 「さて、寝るか」 「もう、寝るの!?」  何の説明もないまま、瑛一はベッドに潜り込もうとしている。  そうはさせじと、惠は兄の手首を握ってその顔を凝視した。  だが惠が瑛一の顔を見たのは、ほんの一瞬のことで、すぐに目を逸らしてしまった。  それでもその勢いで、かねてからの疑問をずばりと兄に叩き付けた。 「兄さん、性欲の処理はどうしてるの?」 「何だ、突然」 「前に言ったよね『僕だって、エッチくらいできるよ』って。僕で処理するんじゃなかったの?」  惠はいたって真剣なのだが、瑛一はげらげら笑いだした。 「一緒に寝る度に、びくびくしてるくせに、よく言うなぁ!」  知ってたんだ、と惠は息を詰めた。  そんな弟の髪を、兄はさらりと撫でた。

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